神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員4人が男性教諭に暴行・暴言を繰り返していた問題が明らかになってから4日で1年。学校や教員は今、どのような状況か。発覚後初めて東須磨小の校内に入り、再生途上の現場を取材した。(斉藤絵美、井上 駿)
9月下旬、平日の午後。職員室では、教員が授業の準備をしていた。様子が廊下からはっきり見える。
「ガラス張りの職員室。珍しいんですよ」
小山光一校長(56)が案内する。被害教員をからかい、ののしる言葉が飛び交い、蹴る殴るなどの暴行があった現場だ。「外から目が届くように」と今年1月、すりガラスだった全ての窓が透明のガラスに変わった。
「○○先生、あの子元気にしてる?」。小山校長が若手教員を呼び止め、立ち話。リラックスした様子で笑顔がこぼれる。
かつては、教員同士があだ名や呼び捨てで呼び合っていた。それがいびつな上下関係やおかしな距離感を生んだ。発覚後は「さん」付けか「○○先生」に徹底しているという。
放課後には、新たな「仕掛け」(同校長)による集まりがある。違う学年を担当する教員4~5人でグループをつくり、若手の相談に乗ったり、ベテランが助言したり。今春から導入した「メンター制度」だ。
最も年上の教員はオブザーバー。2番目の年長者がリーダーとなる。学校では通常、同じ学年を担任する「学年団」で話し合うことが多い。メンター制度は、もう一つグループをつくることで人間関係の風通しを良くし、相談しやすくする狙いだ。
問題が起こった当時は、加害教員など一部が力を持ち、異様な雰囲気がつくられていた。
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「覚えているのは、彼らの視線。熱かったですよ」
校長室で、小山校長が4月に着任した時の印象を振り返った。
今春の人事異動で全教職員27人中18人が新たに赴任し、3分の2が入れ替わった。3分の1は意向を尋ねた市教委に「残って学校を変えたい」と希望した。
さらに、市教育委員会が特別に教員2人を加配した。外部調査委員会は問題の背景として「教員が多忙すぎて子ども以外にかまっていられなかった」と指摘していた。
校長は9月、教職員に簡単なアンケートをした。メンター制度などの取り組みについてどう思うか、数項目を尋ねた。
学校再生のスタートと、新型コロナウイルスの対応が重なった日々。「おおむね好評な回答だった」。胸をなでおろしたという。
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学校に入る際、校長にお願いされた。「教員に声を掛けることはやめてほしい」。ただ、以前から勤務する男性教員と少しだけ話せた。
「発覚直後、再生に向けて頑張ろうってみんな強い気持ちだった。でも報道が繰り返され、学校を批判する電話がなりやまない。心が折れました」
小山校長は、問題についてあえて触れないことを決めているという。
「みんな乗り越えようとしている。何よりも、東須磨の教育を進めることが大切なのです」
【教員間暴行・暴言問題】 2019年秋、神戸市立東須磨小学校の教員4人が、男性教諭らに激辛カレーを食べさせるなどの暴行や暴言を繰り返していたことが発覚。神戸市は条例を改正し、同市教育委員会は同年10月、4人を分限休職処分にして給与を差し止めた。外部調査委員会は20年2月、報告書を発表し125項目の加害行為を認定した。市教委は2人を免職、2人を停職などの懲戒処分にした。兵庫県警は3月、暴行と強要の疑いで4人を書類送検し、神戸地検は起訴猶予処分とした。
