兵庫県内の高卒就職戦線、売り手市場に異変 女子人気職種、コロナ直撃

2020/10/03 09:25

社会人になった卒業生からのメッセージが張られた進路指導室前の掲示板=神戸市兵庫区会下山町3、市立神港橘高校

 新型コロナウイルスによる景気変動で、来春卒業する高校生の就職戦線に異変が生じている。求人倍率は全国、兵庫県内ともに、昨年から低下してもなお2倍以上を保つが、職種や業界によっては件数が大幅に減少。特に、女子生徒に人気がある観光関係や店頭販売は厳しい情勢だ。求人が前年から約3割減った高校では、進路指導の教諭が「視野を広げてほしい」と生徒に助言。採用者選考はコロナ禍を受け、例年より1カ月遅い10月16日に始まる。(上杉順子)


 商業高校の神戸市立神港橘高校(同市兵庫区)は1学年約320人のうち、100人前後が就職を希望する。今年も7月に企業から求人票の受け取りが始まったが、件数は伸びず、9月初旬の段階で例年の3割減だった。「昨年までは人手が不足する売り手市場だったのに」と同校進路指導部の就職担当、阪裏(さかうら)利博教諭は嘆く。
 特にホテル従業員や、和洋菓子など嗜好(しこう)品の販売職員の求人が顕著に減り、毎年出していた販売職に代わり、製造職を募るメーカーもある。同校の生徒は女子が8割を占めており「減ったのは女性に人気の業界や職種ばかり。実感は3割減どころではない」という。
 一方、求人が増えた業界や職種もある。2025年の大阪万博開催を見越し、建設土木系の会社は熱心に学校を訪問している。慢性的な人手不足に悩む介護業界も、他業種が採用を控える今、熱心に売り込んできている。
 阪裏教諭は「事務職はそれほど減っておらず、近年は女性の職の選択も広がっている。求人の減少は一昨年と昨年の状況が良かった反動でもあり、今年も校内の有効求人倍率は1倍を超えている」とも話す。
 社会経験が少ない高校生は仕事への先入観が強い場合があり、職種研究や職場見学で志望先が広がることも多い。同校は、生徒と相談し、8月上旬までに受けたい会社を10社書かせるが、今年も大半の生徒が第3志望までの会社を受験できることになった。
 むしろ、危惧するのは来年以降だ。阪裏教諭は「会社の体力は徐々になくなるもの。コロナ2年目が怖い」と警戒する。
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 厚生労働省が発表した2020年度高校新卒者の求人・求職状況は7月末時点で、求人数は前年同期比24・3%の減少(兵庫県内は23・9%減)、求人倍率は2・08倍(同2・23倍)となっている。

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