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「自分の枠を超えるような作品を書きたい」と話す稲葉祥子さん=大阪市内
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「自分の枠を超えるような作品を書きたい」と話す稲葉祥子さん=大阪市内

 同人誌を創作発表の場とする作家を対象とした「第14回神戸エルマール文学賞」に、稲葉祥子(いなばさちこ)さん(53)=堺市=のファンタジー小説「あやとり巨人旅行記」が選ばれた。「巨人という異形(いぎょう)の者の悲しみとおかしみを根底に据え書いた。受賞により小さな作品が消えずに残る。いつか本にしたい」と夢を膨らませている。

 稲葉さんは大阪女子大(現・大阪府立大)学芸学部国文学科卒。大阪文学学校に約5年在籍し、小説を学んだ。2008年から同人誌「雑記囃子(ぞうきばやし)」に所属。日本語教師の傍ら、休日に執筆する。

 「あやとり-」は400字詰め原稿用紙約250枚超の作品。人だけでなく生物や物が語ることで、いきいきと心情や情景を描き出す。

 電線であやとりを楽しむ東の国の巨人が、元バレリーナのノユリと夫婦となり、南、北、西と各国を旅する。西の国では、聖山から噴き出たガスを浴びたシロハナの花粉が人間の体をむしばみ、死に至らせる。人々は白い防護服にマスクで身を守り、解毒剤を持ち歩く。そこに眠っている間に連れてこられた巨人は救世主に祭りあげられ…。

 執筆に当たり、2015年にノーベル文学賞を受けたスベトラーナ・アレクシエービッチの「チェルノブイリの祈り」が、ずっと頭にあったという。チェルノブイリ原発事故で被害を受けた人々の証言集で、「『西の国』はチェルノブイリから想像した。そこに住む人々の悲しみと、救われたいという祈りを物語に込めた」と稲葉さん。さらに世界的な課題となっている難民についても思いをはせた。

 巨人については「体が大きすぎて、何をしても、うまく土地になじめない。救世主といっても利用されている。そんな巨人の悲しみを、一歩引いた、観察者の視点で書いた」と説明する。

 参加する雑記囃子では、月1回合評会を開き、年1回同人誌を発行する。「合評会は的確な批評が得られる貴重な場。よりどころがあるから安心して書ける」といい、本作にもいろんなヒントをもらったと感謝する。

 稲葉さんは「どこかの誰かの小さな悲しみを、おかしみを交えて書いていきたい」と抱負を語る。

 同賞には他に葉山ほずみさんの小説「夜を漕ぐ」が選ばれた。いずれも「第14回受賞作品集」に掲載。問い合わせは神戸エルマール文学賞事務局TEL078・912・8549

(網 麻子)

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