異色の映画監督が迫った「れいわ一揆」 神戸で公開へ
2020/11/05 16:00
「れいわ一揆」の一場面((C)風狂映画舎)
庶民生活の底上げを図る政策を掲げて昨年夏の参院選で躍進し、重度障害のある国会議員2人を誕生させた「れいわ新選組」。その型破りな候補者らに、異色のドキュメンタリー作家・原一男監督が迫った「れいわ一揆」が、7日から神戸市中央区元町通4、元町映画館で公開される。作品を貫くのは、言葉で人を動かすという、政治の原点とも言うべき営みへの、愚直なまでの信頼だ。
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山本太郎代表の勧誘に応じた、いずれも個性豊かな10人の立候補者。労働や貧困、原発、少数者への差別といった問題を、自身の存在によって“見える化”していく。その中で、女性の服を着る「女性装」の東大教授、安冨歩さんに監督は焦点を当てる。
馬とともに全国を巡り、鍵盤ハーモニカの音色を背に、「子どもを守ろう」と呼び掛ける安冨さん。巧みな演説で人々を引き付ける山本代表との違いが際立つ。聴衆も少ない。はや失速か。しかしよく見れば、聞き入る人たちもいる。失速という見方をいったん脇に置く。
新規国債の発行で消費税ゼロ、奨学金の返済チャラといった政策を訴え、勢いを増す「れいわ」。17日間の短期決戦、安冨さんももう少し効率良く-という思いがよぎる。だが行く先々で子どもとふれあう姿を見るうち、また揺らぐ。効率一辺倒の結果が、いろいろと行き詰まっている現状ではないのか、と。
上映は休憩を挟んで4時間8分。「ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」では撮影対象の激情や虚言と向き合ってきた原監督だが、今回、候補らの言葉は信じられる、と何度も感じたという。「初めての経験だった。(長さを)縮めることはできたが、胸に染みる言葉を可能な限りたくさん届けよう、記録しようと思った」と語る。
20日まで。「れいわ一揆 製作ノート」(皓星社)も刊行。(新開真理)