尼崎JR脱線 事故車両保存の施設概要を遺族に説明 一般公開は「将来の課題」

2020/11/07 20:06

事故車両を一体保存する施設(黄色で囲まれた部分)の完成予想図

 JR西日本は7日、尼崎JR脱線事故の事故車両を一体保存するため、大阪府吹田市の社員研修センター内に新たに整備する施設の概要を明らかにした。衝突や救出作業で切断・分解された車両の復元は「技術的に困難」としたが、映像技術で当時の状況を再現。社員教育に活用する。2024年秋の完成を目指す。一般公開については「将来的な課題」とした。 関連ニュース 「元通りの顔に」治療求め10年諦めず 脱線事故の被害女性 「私は今も、主人に恋をしている」 失ってなお 夫婦の歩み今も あの時、生死を分けたものは… 1両目乗車の男性 尼崎JR脱線事故

 兵庫県伊丹市などで毎年開いている遺族や負傷者の説明会で伝えた。今年は新型コロナウイルス感染予防のため、三田や川西市など4会場に分けて中継でつなぎ、時間も短縮して実施。計97人が出席した。
 説明会終了後に会見した長谷川一明社長によると、施設は天井高約7メートルの平屋で、約1500平方メートルある1階部分に全7車両を置く。地下には映像技術を使った設備を設け、事故の重大性や悲惨さを伝える。
 遺族からは事故現場での車両保存や一般公開を求める声もあったが、長谷川社長は「引き続き慎重に検討する」と従来の見解を繰り返し述べた。
 長男=当時(33)=を亡くした男性(79)=伊丹市=は「今はJRの取り組みを見守るべき時。公開方法などは意見が分かれるかもしれないが、事故の風化を防ぐことが最善だ」と同社の方針を肯定した。
 一方、長女=当時(40)=を亡くした女性(80)=大阪市城東区=は「車両は事故の悲惨さとともに鉄道の恒久的な安全を強く訴える現物だ。事故を知らない世代のためにも現場での一般公開が必要」と訴えた。説明会は8日も開く。(前川茂之、竹本拓也)

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