公的職業訓練“現役”も腕磨く 中小企業向け10年で1・6倍に

2020/11/16 09:50

「在職者訓練」で、溶接技術を学ぶ参加者たち=尼崎市武庫豊町3、ポリテクセンター兵庫

 職業訓練と言えば「失業者のための施設」とのイメージが強い中、企業の技術者らを対象にした公的職業訓練が人気を集めている。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(千葉市)が中小企業向けに行う訓練の参加者はここ10年で約1・6倍に。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で一時休講を余儀なくされたが、人材を育てる時間や余裕がない企業が変わらず活用するケースが目立つ。(末永陽子) 関連ニュース 女性の力を製造現場に 職業訓練校、未経験者も手厚く支援 受講生増加に 神戸税関で働く記憶喪失の「神戸さん」 推定50歳、唯一の記憶は… 離職者の再就職を支援 職業訓練施設 ポリテクセンター


 同機構が運営する全国のポリテクセンターでは、失業した人が再就職を目指すための職業訓練を行っているが、リーマン・ショック後の2009年度をピークに受講者は減り続けている。
 代わりに伸びているのが、中小企業の技術者らを対象とした「在職者訓練」だ。同機構が全国で行う訓練の受講者は、09年に4万2367人だったが、18年には7万人を超えた。
 同機構は「人手不足やコスト削減で、技術者の教育に限界を感じる企業も少なくない」とみる。
 兵庫県内のポリテクでも、在職者訓練の受講者は伸びている。離職者訓練は受講者が減少傾向にある一方で、14年度に2050人だった受講者は増加傾向で、19年度には2613人となった。
 尼崎市にあるポリテクセンター兵庫では、4月の「緊急事態宣言」以降休講していたが、6月から再開。アルコール消毒や体調チェックなど対策を徹底しながら、訓練を続けている。
 参加者は基礎を身につけたい初心者から、理論的に技術を学び直したいベテランまでさまざま。指導員は「鋼材メーカーや部品加工など業種も幅広く、近年は大企業からの要請も多い」と説明する。
 建設業で働く西宮市の40代会社員は何度も訓練に参加し、新しい資格を取る前などに活用している。「必要な道具が豊富にそろっていて、実践的な技術を身につけられるのが魅力」と語る。
 企業が社員1人当たりにかける教育訓練費は、減少傾向にある。厚生労働省によると、ピーク時の1991年は月1670円だったが、2016年には1112円。約4割減少した。
 ポリテク兵庫の担当者は「即戦力を求める企業が活用している。兵庫県はものづくり企業も多いので、離職者訓練と合わせて地元のニーズにあった内容を提供していきたい」としている。

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