「福男選び」始まりはいつ? 54年ぶり中止「走り参り」の軌跡 西宮神社

2020/12/25 20:30

2020年1月に行われた西宮神社の神事「福男選び」で一斉に駆け出す参拝客ら=西宮市社家町、西宮神社

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、西宮神社(兵庫県西宮市社家町)の恒例行事「福男選び」の中止が決定した。54年ぶりの中止を受け、江戸時代ごろに自然発生したという起源や、戦争や全国的な祭礼事故が原因で中止になった過去など「福男選び」の軌跡をたどった。 関連ニュース 福男受け止める神職は“体育会系” 西宮神社の開門神事 境内ダッシュの「福男選び」 発祥は静寂の神事から? 兵庫・西宮神社 福男のご利益あった! 今年「二番福」のお笑い芸人、憧れの吉本新喜劇入り

 本えびすの1月10日午前0時、閉じられた表大門の中では神職による神事が始まる。その後の午前6時、太鼓の音とともに表大門が厳かにその扉を開く。「開門神事」だ。一斉に駆け出す参拝者たち。約230メートル先の本殿まで「走り参り」をし、最初に到着した3人がその年の「福男」に認定される。
 福男は、その年の福を集め、周囲の人に福を広めるとされる。年々過熱する福男争奪戦に、近年では先着1500人の中から抽選で前列の108人と後列の150人を選ぶようになった。福男になるためには抽選の“狭き門”を突破し、できるだけ前のスタート位置を確保する運を持ち合わせることも必要だ。毎年、開門時には5千人以上の参拝者であふれかえる。
 福男選びを運営する「開門神事講社」の講長、平尾亮さん(44)によると、「走り参り」は江戸時代より前からあったとされる。信仰深い人たちが1番先に「えびす神」にお参りしようと、自宅から神社に走って行ったことから自然発生したという。
 また同神社によると、1905年に阪神西宮駅が開業して遠方からの参拝者が増え始め、40年ごろから福男の認定が始まった。商品は米や酒など。90年代後半になって、新聞やテレビなどの影響もあり、参加者が急増したという。
 2001年に起きた明石歩道橋事故で問題になった群衆事故への懸念や、04年に1人を勝たせるためにチームを組んだ複数人で他の人を妨害する不正などがあり、05年から抽選制が取り入れられた。
 今回のように中止になったのは、戦時中の空襲による被害の影響を受けた46~52年と、全国の祭礼行事で死者が続出し、警察から指導を受けた66、67年の2度のみ。阪神・淡路大震災からほぼ1年後の96年にも「走り参り」は途絶えることなく続けられた。
 コロナ禍を受け、54年ぶりの中止となる「福男選び」。11月初旬の時点で同神社は、参加人数を縮小するため事前の申し込みと抽選による神事の継続を予定していた。しかし新型コロナ感染者数の急増を受け、12月中旬に中止を決断。参拝者が安全に本殿へ移動してもらう方策を考えており「参拝そのものを禁止するわけではないので、ゆっくり歩いて参ってほしい」としている。(村上貴浩)

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