「毎日が交通事故です」ドキュメンタリー映画「相撲道」神戸で公開

2021/01/06 20:00

大関豪栄道(現武隈親方)の引退前の心境を詳細にとらえた映画の一場面((C)2020「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」製作委員会)

 大男が自らの肉体を盾にしてぶつかる-。過酷な格闘技に挑む力士に迫ったドキュメンタリー映画「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」(坂田栄治監督)が、神戸市中央区元町通4の元町映画館で公開されている。名門の境川部屋、高田川部屋に密着し、朝げいこやちゃんこ鍋を囲む素顔を収録。高砂市出身の妙義龍関らへのインタビューを交え、力士という「現代の侍」の姿を浮き彫りにしている。(津谷治英) 関連ニュース 「筋肉は裏切らない」はどう生まれた 生き方や働き方にも通じる「筋トレ」 美脚や腹筋SNSで発信「筋トレ女子」続々登場 自分磨き、ママ世代にも人気 死闘24分間「令和の巌流島決戦」を制した阿部 逆境さえも血肉に

 早朝の境川部屋。力士たちが土俵で汗と泥にまみれる。背中からは湯気が立ち、息遣いも荒い。本場所映像には、芦屋市出身の大関貴景勝の取り組みも登場。相手と激突した瞬間の木をたたいたような乾いた音が、衝撃を伝える。
 妙義龍関の言葉が生々しい。「200キロある人がぶつかってくる。毎日が交通事故です」
 撮影は2018年の年末から約半年行われ、元大関豪栄道(現武隈親方)の引退前の葛藤を詳細にとらえる。けがに悩み、治療しながら土俵に向かう姿が痛々しい。なぜ彼らは、危険と背中合わせの角界に身を投じたのか。
 歴史解説が理由を教えてくれる。相撲は、血気盛んな男らの力比べとして古代に端を発した。戦国時代には武士の戦闘訓練として発展。よろい、甲に身を包んだ侍の一騎打ちは、時代劇のように一撃で相手を倒すことは難しく、取っ組み合いを経て勝敗を決した。相撲の技は、生き残れるかどうかの生命線だったのだ。
 武隈親方が「厳しいことから逃げてばかりいたら、精神的にも強くなれない」と言うように、土俵は武者修行の場といえる。「アスリート」とは違う「力士」の誇りの根底にある武士道の流れに注目し、海外の人も魅了する国技の文化的視点を提示している。
 15日まで。104分。元町映画館TEL078・366・2636

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