被災の中で生まれる絆歌う 震災原点の2人組「ブルームワークス」メジャーデビュー
2021/02/10 19:00
阪神・淡路大震災が発生した5時46分を刻む時計を抱くマリーナ像の前に立つブルームワークスのKAZZさん(左)と石田裕之さん=神戸市中央区加納町6、東遊園地
音楽を通じて防災の大切さを発信する神戸のユニット「ブルームワークス」が、19日に配信が始まるシングル「Bloomin’(ブルーミン)~笑顔の花咲いた~」でメジャーデビューする。阪神・淡路大震災を経験したKAZZ(カズ)こと桝田和宏さん(48)と、防災士の石田裕之さん(40)が結成して3年。ボイスパーカッションがリズムを刻む美しい旋律の曲に込めたのは、命を守るためのメッセージだ。「防災の大切さを人生に織り込んでもらいたい」。2人の体験をもとにした絵本アニメも公開する予定で、幅広い世代に防災の種をまいていく。(金 旻革)
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KAZZさんは神戸市長田区出身で、日本のボイスパーカッションの第一人者。プロのアカペラグループ「ベイビー・ブー」と「パーマネントフィッシュ」に参加した経歴を持つ。
26年前の震災で自宅は全壊した。防災意識が高まり2017年、兵庫県立大大学院減災復興政策研究科の第1期生で入学。そのころ東日本大震災の被災地支援を続けるシンガー・ソングライターの石田さんと出会い、ユニットを結成した。
防災メッセージをにじませたポップな曲の数々を輩出し、テレビやラジオなどのメディアに出演してきた。2年前には防災・減災をテーマにした音楽フェス「BGM・スクエア」を開催して約2千人を動員。活動実績が大手レコード会社「ワーナー・ミュージック・ジャパン」の目にとまった。
メジャーデビュー曲となる「Bloomin’-」は、避難の大切さ、被災の中で生まれる絆を歌う。
まずはあなたのこと 大事にして 絶望が飲み込んでも 終わりじゃない はるか遠く 私を呼ぶ声がする
19年11月、2人はインドネシアを訪問。100年前から歌い継がれる津波避難の伝承歌「スモン」を聞き、独自の解釈と表現を施して新曲を完成させた。KAZZさんは「合唱できて100年先まで伝えられる歌を意識した」と語る。
また、曲とともに、防災の普及を目指す試みが絵本アニメ「ピンクの種とリュッくん」。被災地にピンクの種が落ちている。種は歌が上手な花となり、周りの人を笑顔にする不思議な力を持っていた-。2人の被災体験や被災者支援活動をストーリーの土台に据える。アニメは3月に動画配信サイトなどで公開するという。
「今年は東日本大震災から10年の節目。メジャーデビューできるのは防災への関心が社会的に高まっていると感じる」と石田さん。KAZZさんは「音楽を通じて災害の記憶と教訓を伝承する活動に一層励みたい」と気を引き締める。
今月20日と3月6日にはJR三ノ宮駅前の期間限定スペース「ストリートテーブル三ノ宮」で記念ライブを行う。