医療従事者ら限定、貸し切りサービス バーや飲食店「過酷な生活支えたい」
2021/03/22 11:40
医療従事者ら限定のサービスを続けるバーや料理店のオーナー=神戸市中央区下山手通2、ローゲンジッツ
神戸・三宮のバーや飲食店など4店舗が、営業時間前に医療従事者らを対象とした1日1組限定の貸し切りサービスを提供している。「新型コロナウイルスに感染したら影響が大きい」と、通常営業では入店に二の足を踏む医師や看護師らの心情を思って企画。口コミで利用が広がっているといい、店主らは「コロナ禍で、一般人以上に当たり前が当たり前でなくなった人たちを支えたい」と話す。
関連ニュース
キッチンカーで熱々どうぞ ピザ店の男性、医療従事者と飲食店応援
「医療関係者の皆さん、ありがとう」神戸でシークレット花火【動画】
差別や偏見で割られた病院の窓ガラス 新型コロナ感染者200人超診察
「はー、幸せや」
昨年11月中旬、三宮のバー「ローゲンジッツ」(神戸市中央区下山手通2)。カウンターの真ん中の席に1人で座る40代の女性医師が、しみじみと漏らした。
同店の常連客だったが、コロナ禍で足が遠のいていた。オーナーバーテンダーの難波宏行さん(42)が、「他にお客さんがいなければ」という女性を開店前に招待した。
30分程度の来店で、女性が口にしたのは、ノンアルコールカクテル1杯だけ。解放感に浸る様子に、普段の張り詰めた雰囲気を想像した難波さんは、その日のうちに、貸し切りサービスのアイデアを会員制交流サイトで公表した。
「過酷な勤務に加え、プライベートまで制限されてストレスの発散もできない。二重苦、三重苦の生活を少しでも助けてあげたい」
すると、近隣の同業者らから「自分たちの店でもやりたい」という要望が相次いで寄せられた。
ワインバーの「アワとワインとシェリーとチーズ」「エカイユ」、フランス料理店「LA TABLE DE YAMASAKI(ラ・ターブル・ド・ヤマサキ)」とともに、同12月から正式に始めた。
60歳以上の高齢者やその同居者、小さい子どもがいる家族なども対象。事前予約制で、貸し切り料金は求めない。酒メーカーなど趣旨に賛同する企業・団体が提供した食品やコーヒーなどをお土産として手渡すサービスも始めている。
各店によると、半月ほどで合計10件を超える利用があったという。「LA TABLE-」では、昨年4月から休止しているランチタイムを開放。利用した看護師らからは「人目を気にせず、ゆっくり時間がとれた」と好評だ。
1~2月の緊急事態宣言の再発令中は中断したが、解除後に再開した。難波さんは「コロナ禍で厳しい状況にある飲食業界だからこそ、他の苦しんでいる人たちのことを考えるべきだと思った」と話す。
サービスの詳細や予約はローゲンジッツTEL078・321・2918、各店舗へ。(小川 晶)