「理屈を超えた闇のような部分が小説に」 小川洋子さん後進にアドバイス

2021/03/23 16:00

小川洋子さん

 兵庫県西宮市在住の作家、小川洋子さんによるオンライン講演会がこのほど開かれた。「小説の不思議」と題し、敬愛するアンネ・フランクへの思いや、後進へのアドバイスを語った。 関連ニュース 【名作文学と音楽(33)】モーツァルトで誘惑を ソレルス『ゆるぎなき心』、ブローフィ『雪の舞踏会』 【名作文学と音楽(32)】愛と幻想のチェンバロ音楽 小川洋子の『やさしい訴え』、須永朝彦の吸血鬼小説3作 NIE神戸大会が7月31日開幕 開会式に佐渡裕さん、記念講演に小川洋子さん 概要決まる

 「大阪文学学校」(大阪市中央区)の特別講座で、約170人が聴講した。
 小川さんは、世界の名著と呼ばれる作品であっても、最後まで伏線が回収されず、不意を突かれるような結末を迎える場合があることを紹介。「社会や人間には、理屈でさばききれない闇のような部分があり、ありのままに描いたらそのような小説になる」とした上で「理屈で説明がつかないことを見捨てず、すくい上げる両手が文学なのではないか」と作家の意義について語った。
 また、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の被害者で「アンネの日記」の作者のアンネ・フランクについて「豊かな言葉で自分の内面をありありと語る才能に圧倒された」といい、「アンネ・フランクに対する気持ちから書き始め、記憶が奪われる残酷さを描きたかった」と小川さんの代表作の一つ「密(ひそ)やかな結晶」(1994年)の創作意図を振り返った。
 リアルであり幻想的でもあると評される自身の作品について「私自身はリアルであることに重点を置いている」とし「人々がアブノーマルな部分を抱え、隠しながら、どうにか社会生活を営む姿を小説として書きたいし、読みたい」と語った。
 聴講者には「能力を振り絞って一生懸命に書くよりも、登場人物の後ろでこっそり描写する態度でいる方が心地いい」と明かす。「作品の中で二つの道に迷ったら予定していなかった方へ行くのがおもしろい。自分の力だけで書こうとしないことが大切」とアドバイスした。(井原尚基)

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