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昨年11月28日、最後の舞台となった宝塚文化創造館で「御誂次郎吉格子」を演じる井上陽一さん(鵜久森典妙さん提供)
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昨年11月28日、最後の舞台となった宝塚文化創造館で「御誂次郎吉格子」を演じる井上陽一さん(鵜久森典妙さん提供)

 2月に82歳で亡くなった活動弁士・井上陽一さんの追悼上映会が、5月から6月にかけて神戸などで開かれる。コロナ禍で中止や延期が相次いだ舞台への復帰を目前にしながら、入院先で体調が急変。「活弁ライブ」に長年伴走してきた映画プロデューサー鵜久森典妙(うくもりのりたえ)さん(72)=兵庫県西宮市=は「まねのできない語りの芸を映像でしのびたい」とする。(田中真治)

 兵庫県姫路市神屋町出身。小学生の頃から映画館に通い、高砂市の相生座で映写技師に。大阪の無声映画上映会で出会った戦前からの弁士・浜星波(せいは)の手ほどきを受け、1979年5月に独り立ちすると、映画祭や各地の上映会で活躍した。

 その映画人生と舞台を後世に伝えようと、鵜久森さんは2016年にドキュメンタリー「最後の活動弁士 井上陽一の世界」(46分)を製作。追悼イベントとして再上映と、井上さんの教えを受けた大森くみこさんを弁士に迎えての活弁ライブを企画した。

 日程は次の通り。予約や料金などの問い合わせは各会場へ。

 「井上陽一の世界」=5月8日13時半、神戸市兵庫区神田町のいちばぎゃらりぃ侑香。TEL078・361・5055▽同21~23日、神戸市長田区腕塚町5の神戸映画資料館(「御誂次郎吉格子」の活弁音声付き上映、トークも予定)。TEL078・754・8039

 活弁ライブ=5月16日11、14時、大阪市淀川区十三本町のシアターセブンで「特急三百哩」。TEL06・4862・7920▽6月19日14時、兵庫県宝塚市武庫川町の宝塚文化創造館で「杉野兵曹長の妻」と「井上陽一の世界」。TEL0797・87・1136

     ◇     ◇

【追想】600回目前、気迫の舞台

 594回。デビューから40年余り、関西の活動弁士の伝統を継ぐほぼ唯一の存在としてステージに立った回数だ。

 「語りたいねん」と会場の規模にかかわらず、声が掛かれば出掛けていった。台本は手作り。生演奏の代わりに、場面に合わせた伴奏テープも自分で編集し、マイク片手に語りながらラジカセを操作する名人芸をみせた。

 「無声映画は良ぅなんのも悪ぅなんのも、カツベンのしゃべり一つや」。関西流の七五調を守り、リズムと間にこだわった。その活弁に懸ける気迫は2016年1月、姫路の映画館の閉館イベントで、まざまざと感じた。

 午前の部を終える直前、スピーカーの音声に負けじと声を張り上げ続けたせいか、脳貧血で救急搬送された。しかし、ベッドで気がつくと劇場に駆け付け、小1時間の遅れで午後の部を再開。「大きな拍手で迎えてくれたので、一度に元気が出た」と無事務め上げ、満場の観客を沸かせた。

 実はこれ以前から病を抱えており、翌年末から人工透析を受けるようになったが、公演意欲は衰えることなく、回数を絞って継続。それだけに昨年は「コロナだけはどうしょうもない」と悔しがっていたという。

 今年の4月10日に大阪・高槻現代劇場への出演が決まっていた。寅(とら)年生まれで、阪神タイガースの大ファン。酒を愛し、「600回を迎えたら祝杯や」と約束をしていたが、かなわなかった。あの名調子と芸談をもう聞くことができないのが、たまらなく寂しい。(田中真治)

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