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実家に展示施設「陽だまり舎」を開いた人形作家の荒木富佐子さん=兵庫県市川町(撮影・鈴木雅之)
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実家に展示施設「陽だまり舎」を開いた人形作家の荒木富佐子さん=兵庫県市川町(撮影・鈴木雅之)
作り方も指導。丁寧な作業で人形に“命”を吹き込む=兵庫県市川町(撮影・鈴木雅之)
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作り方も指導。丁寧な作業で人形に“命”を吹き込む=兵庫県市川町(撮影・鈴木雅之)

 人形作家の荒木富佐子さん(73)=兵庫県神河町=は、和紙人形で昭和30年代の農村風景を再現する。村に初めてやってきたテレビに家族や近所の子どもが見入る様子、お手玉を教えるおばあちゃん、ヒガンバナを摘む少女など、原体験を投影。「人のぬくもりに満ちた時代を思い出してほしい」とほほ笑む。

 作業は実に細やかだ。紙粘土やおがくずをのりで固め、人形の下地をこしらえる。和紙を幾重にも張り合わせ、顔や衣服を仕上げる。子どもの頃に見た光景を呼び起こしながら、じっくり、丁寧に。完成まで数カ月かけることもある。

 県内各地で展覧会を開き、国際交流展にも参加。全国レベルの手工芸コンクールなどで数々の受賞歴を誇る。2018年には、同県市川町にある実家で展示施設「陽(ひ)だまり舎」をオープンした。築100年を超える木造家屋に素朴な風合いの作品が並ぶ。

 和紙人形との出合いは26歳。雑誌で紹介された作品に刺激され、多忙な育児の合間を縫って人形作りに没頭した。美人画集や歌舞伎役者の写真集なども手本に腕を磨く一方、「ただ華やかできれいなだけの人形は作りたくない」という葛藤を抱えていた。

 転機は、農村の営みを題材にした人形作家の渡辺うめさん=故人=を知ったこと。命を宿したような独特の作風に魅入られた。「子どもの頃の暮らしがとても懐かしく、いとおしく感じた。記憶が次々とよみがえり、創作したいものがあふれてきた」。100歳を超えてなお旺盛な創作意欲を見せた渡辺さんに影響を受け、表現の幅が広がった。

 作品の鑑賞者や作り方を教える人たちとの世間話も楽しみの一つ。高齢者らが人形に自らの人生を重ね、振り返る。「人形が言葉を語らせてくれ、人と人とのつながりが生まれる。その喜びが長年創作を続ける秘訣(ひけつ)」と目を細める。

 新型コロナウイルス禍で社会に不安や孤独が広まる今、作品を通じて「貧しかったけれど家族や地域の愛情に支えられた暮らしの温かさを伝えたい」と願う。

 最近の主な題材は孫。コロナ禍で、計画していた米国への留学を中断せざるを得なくなり、先の見えない状況に困惑する。

 「懐かしい農村風景にいた私を優しく見つめていた祖母。そんな視線で孫たちを見つめ、作品を着想する。いとおしくて仕方ない、そんな人形をずっと作り続けたい」

 チャレンジ精神も健在だ。和紙に金箔(きんぱく)を貼るなど、装飾やデザインにいっそう磨きをかけようと新たな模索を続ける。

 半世紀近くも一筋に打ち込んできた和紙人形作り。世代を結ぶライフワークに冒険心と優しさを携える。(佐藤健介)

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