藤の花や自画像… リアルな鉛筆画 神戸で吉村芳生展

2021/04/10 06:00

吉村芳生さんの代表作「無数の輝く生命に捧ぐ」を見つめる吉村大星さん=神戸ファッション美術館

 並外れた集中力と緻密さで、本物と見まがうような絵を描いた画家の魅力を伝える特別展「吉村芳生 超絶技巧を超えて」(神戸新聞社など主催)が10日、神戸市東灘区向洋町中2の神戸ファッション美術館で始まる。花々や自身の顔などを描いた約60件は写真のようなリアルさで、見る者の視線をくぎ付けにする。 関連ニュース カミワザ過ぎる! お菓子の空き箱から超絶アート、企業から依頼続々 レディコミ界を席巻「早すぎる別れ」 18歳未満は閲覧禁止、女性漫画家の回顧展 個展会場にアジアの妖精!ビビアン・スーさんと夢の約束

 吉村さんは1950年、山口県生まれ。20代からリアリティーを追求する画風を貫いた。57歳だった2007年にようやく注目され始めたが、13年に亡くなった。大規模な個展は神戸では初めて。
 金網を描いた作品は、網目を約1万8千個も描写。自画像は活字まで再現した新聞の絵にあしらう。色鉛筆で藤の花を描いた「無数の輝く生命に捧(ささ)ぐ」(縦約2メートル、横約7メートル)は、東日本大震災があった11年から創作。「花の一輪一輪は亡くなった人の魂」との思いを込めた晩年の大作だ。
 9日の内覧会に訪れた長男の画家吉村大星さん(29)は「父にとって、描くこと、イコール、生きること。亡くなっても、作品から思いがあふれ出ている」と話した。
 6月13日まで。月曜と5月6日休館(5月3日は開館)。一般千円ほか。同館TEL078・858・0050
(小林伸哉)

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