古い洋風長屋が舞台、100%「神戸産の映画」 見た恩師「うらやましいしくやしい」

2021/05/12 05:30

「観客も、この長屋に住んでいるように感じてもらえたら」と話す前田実香さん=神戸市中央区、神戸新聞社

 古い洋風長屋で共同生活を送る若者たちの日常を描いた映画「旧グッゲンハイム邸裏長屋」が、近日シネ・リーブル神戸(神戸市中央区浪花町)で公開される。監督は、神戸生まれで神戸フィルムオフィスに勤務する前田実香さん(34)。「私にとって神戸の海側のイメージがここ。撮りたかった風景と人をギュッと詰め込んだ」と胸を張る。(片岡達美) 関連ニュース 旧グッゲンハイム邸は別人宅だった 神戸・塩屋 ベネチア国際映画祭で監督賞の黒沢清監督 「神戸でなければ成立しない作品」の理由 デザイナーの名前は秘密「SHIOYA」プリント 地名ロゴTシャツ大人気


 前田さんは、映画監督の石井岳龍(がくりゅう)さんが教授を務める神戸芸術工科大メディア表現学科(現映像表現学科)の1期生。卒業後、神戸アートビレッジセンター(同市兵庫区)で映画を担当し、2017年から同フィルムオフィスでロケの支援などを行っている。
 「すてきだなと思う場所が至る所にある神戸の、ロケ地としての魅力に日々触れ、自分でも撮りたくなった」と前田さん。撮影に使った同市垂水区の長屋には、8年間住んでいたという。一緒に暮らした友人たちとの何げないやりとりを書きとめて脚本に仕立て、19年5月末からの5日間で撮影した。
 料理上手の「あきちゃん」、仕事に恋に忙しい「づっきー」、日々の出来事を思いつくまま書き残す「せぞちゃん」。映画は、まるでドキュメンタリーのように、男女が交わすたわいない会話で紡がれる。大きな事件は起こらず、旧グッゲンハイム邸がただ静かに長屋を見守る。
 芸工大の元職員、教員を中心に、在学生や卒業生の協力、機材提供も受けた。「オール神戸の100パーセント神戸産映画。それができることを示したかった」と前田さん。完成作を見た恩師、石井監督が「うらやましいしくやしい」との感想を寄せてくれた。「神戸での石井さんの奮闘を見てきたので、うれしかった」と振り返る。
 自主上映ではなく、商業映画として公開されることを喜び、「地元の人には、地続きの共感を持ってもらえるのでは」と期待する。
 1時間2分。シネ・リーブル神戸TEL078・334・2126

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