宝塚雪組のファンタジー「ほんものの魔法使」開幕 朝美絢、魔術師の青年を好演

2021/05/21 17:25

「ほんものの魔法使」で熱演する朝美絢(中央)と縣千(右端)=宝塚バウホール

 宝塚歌劇雪組公演「ほんものの魔法使」が21日、宝塚バウホール(宝塚市栄町)で開幕した。米国の作家ポール・ギャリコの小説を原作にしたファンタジー。入団13年目、あぶらののった朝美絢が「魔術の都」に新風を吹き込む青年アダムを好演している。 関連ニュース 【写真】朝美絢(右)と娘ジェイン役の野々花ひまり 【写真】昆虫も登場しファンタジーを彩る 元タカラジェンヌの支配人がお出迎え 宝塚ホテル、華麗に再出発

 魔術師試験の予選会に参加するためマジェイアの街にアダム(朝美)がやってくる。言葉をしゃべる犬のモプシー(縣千)が相棒だ。魔術師を夢見る娘ジェイン(野々花ひまり)と出会い、彼女を助手に、試験に臨む。アダムが披露する“ありのままの”魔術は、審査員の誰一人として仕掛けがわからない。マジェイアの住人たちは次第にアダムを恐れるようになる。
 人を疑わないアダムは、魔術師の中では浮いた存在。気負いのない朝美の演技は、その純粋さを際立たせて好感が持てる。よそ者がやって来て共同体に変化を生み、去って行く。日本に古くからある信仰の中の来訪神「まれびと」にも見えた。
 跳んで、はねて、走り回り、キャンキャンほえる(しゃべる)、縣演じる犬のモプシーをはじめ、ニワトリ、ウシ、ハチ、チョウなど、動物や昆虫が擬人化して登場。はじけた演技がとびきりコミカルで、随所で笑いを誘う。
 長老マジシャン、アレキサンダー(透真かずき)の「人は理解できないものを排除しようとする」、孤独にさいなまれたアダムの「一人は怖くないが、一人で行く道が怖い」など、われわれ現代人を映すようなシリアスなせりふも。ファンタジーではあるが、「今」の現実とのつながりを忘れない、木村信司の脚本・演出が光る。
 6月1日まで。同8~16日はKAAT神奈川芸術劇場で。(片岡達美)

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