「抗争となれば現実に用意」拳銃入手どこから? 発砲事件減少でも…
2021/06/02 13:30
暴力団幹部が射殺された発砲事件の現場を調べる兵庫県警の捜査員=2019年11月、尼崎市内
国内で所持が禁じられている拳銃や自動小銃が使われた事件が、兵庫県をはじめ各地で相次いでいる。多くは暴力団の抗争が背景にあるとみられ、5月30日にも岡山県倉敷市で、特定抗争指定暴力団が絡む発砲事件が発生。ここ30年で発砲事件の数は20分の1以下と大きく減ったが、暴力団員がこともなげに「用意する」と言うように、銃の入手ルートはなくなっていない。
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国内で銃器が使われた発砲事件は減少傾向にある。警察白書によると、年間の発生件数は1989年に299件を数えたが、2019年には13件にまで減少。15年に日本最大の暴力団である山口組が分裂し、抗争が激化したが減少傾向は変わらない。
ただ、県内には特定抗争指定暴力団の山口組と神戸山口組の双方が本拠地を置き、発砲事件が度々発生してきた。17年9月に神戸市長田区▽19年10月に同市中央区▽同年11月に尼崎市-で、暴力団員が射殺された。今年3月にも西宮市と神戸市兵庫区で建物への発砲事件があった。
暴力団員は拳銃の入手が容易なのか。それに触れる発言が先月31日、神戸地裁での公判であった。
19年4月に神戸市内で暴力団幹部を包丁で刺したとして殺人未遂罪などに問われた被告の暴力団組員は法廷で、事件が抗争との見方を否定した上で供述した。「抗争であれば、(刃物ではなく)拳銃なり確実に殺せるものを使う」。続く検察官の質問にも「(抗争となれば銃を)現実に用意はします」と応じた。
発砲事件の増加期直後にまとめられた03年の警察白書によると、国内にある拳銃は米国やフィリピン、中国、ロシア製が中心だった。密輸は南アフリカや南米を経由することもあったとみられる。
白書などによると、密輸方法は暴力団関係者による現地調達や国際郵便、中古車部品に隠した輸送、漁船による持ち込みなど。神戸港では00年、フィリピンからの輸入貨物内で拳銃17丁が見つかり、警察が暴力団員らを逮捕した。
複数の捜査関係者は、一部の改造銃などを除けば、国内にある拳銃は今も密輸品が大半と指摘する。
ある兵庫県警の捜査員は、水際対策が強化されて発砲件数や押収量が減少したことなどから「密輸量も減っているのではないか」とみる。一方で「過去に持ち込まれた銃は押収しきれず、今も国内に残っている。最近の抗争事件でも、状態が悪い古い海外製の銃が使われている印象だ」と話す。
別の捜査員は「暴力団に拳銃を調達するブローカーがいる」とみる。また山口組の分裂後、抗争を見越した暴力団の間で需要が高まり、暴力団が調達する銃の値段が上がったとの見方もあるという。