5期20年井戸県政の軌跡 震災からの「創造的復興」に心血、「新行革プラン」で収支均衡達成

2021/07/30 05:30

■1期目 台風23号で被害を出した宝塚市武田尾地区を視察=2004年10月、同市

 5期20年にわたり兵庫県政をけん引してきた井戸敏三知事(75)。阪神・淡路大震災で膨大な負債を抱えた県財政の再建に向け、行財政構造改革を断行しながら、復旧・復興に注力。社会インフラ整備・充実など県民生活を守るための投資は惜しまなかった。その県政史上最長となった井戸県政に31日、終止符が打たれる。 関連ニュース <選択の記憶>プレーバック兵庫県知事選(7)-2021年 自民会派分裂、混乱の末に <選択の記憶>プレーバック兵庫県知事選(6)-2017年 高齢と多選、批判振り切り <選択の記憶>プレーバック兵庫県知事選(5)-2001年 唐突に辞意、戦略したたか


 井戸氏は1968年、旧自治省(現総務省)に入り、大臣官房審議官などを歴任。震災翌年の96年、県副知事に就任した。任期途中で知事を辞職した故・貝原俊民氏の後継として2001年7月の知事選に立候補し、初当選。連続5期を重ねた。また10年、設立された関西広域連合の初代連合長に就き、10年間務めた。
 心血を注いだのは震災復興だった。被災前よりも、より良い社会を目指す「創造的復興」は井戸氏の肝いり。復興のシンボルに位置付けた県立芸術文化センター(西宮市)が05年に開館し、世界的指揮者の佐渡裕氏を芸術監督に迎えた。
 被災地の復旧・復興関連事業で県の負担分は2兆3千億円。うち1兆3千億円を借金で賄った。「改革の断行なくして兵庫の再生はない」。井戸氏は08年度に「新行革プラン」を策定。職員数の3割削減・給与カットや助成事業費削減などを11年間続け、18年度決算で震災後初めて収入の範囲内で支出が収まる「収支均衡」達成にこぎ着けた。
 一方で、県民の安全安心を重視する姿勢を鮮明にし、県立こども病院や県立加古川医療センターなどの中核的な医療機関を整備。南海トラフ巨大地震に備えた津波防潮堤などの堤防はまもなく整備完了予定で、公立小中学校の校舎耐震化も達成間近となっている。
 任期最終盤は、新型コロナウイルス感染症への対応に尽力した。(金 旻革)

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