機能性と美の調和 フィンランドの建築家夫婦を紹介 神戸で「二人のアアルト」展
2021/08/05 21:00
波打つような壁が印象的なニューヨーク万国博覧会フィンランド館の再現展示=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
使いやすくて、居心地がよくて、美しい。そんなモダニズムのデザインで社会を良くする。熱い思いを抱いたフィンランドの建築家夫婦を紹介する「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展が、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開かれている。建築模型や家具、設計図など約220件が並ぶ。建物の壁や間取りを再現した大型展示もあり、機能性と美の調和を体感できる。(小林伸哉)
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「建築は、二人のラブストーリーのいつも中心にありました」。展覧会の図録には、孫のインタビューが収録されている。夫婦の書簡には、日々の生活のことだけでなく、建築について触れられ、ロマンティックで印象的だった-と。
夫はモダニズム建築の巨匠と称されるアルヴァ・アアルト(1898~1976年)。妻はインテリアや家具、食器のデザイナーとしても才能を発揮したアイノ・アアルト(1894~1949年)だ。24年に結婚して2人の子を育てた。
展覧会では、十分に評価されてこなかったアイノの役割に光を当て、夫婦で協働した25年間に着目する。2人の業績は分かちがたい。手を携えたからこそ、生まれた発想がある。
建築は「社会を改善する手段」。そうとらえる近代建築国際会議に29年、アルヴァが参加した。夫婦は優れた設計で、暮らしを変えるべく動き出す。
その名も「最小限住宅」。4~5人家族向けアパートの間取りとして、30年の展覧会で示した。会場では実物大で再現している。
小さくても快適で維持しやすい住居を目指した。折りたたみ式のソファベッド、机に入るキャスター付きの引き出しなどを配し、空間を有効に使った。アイノは、人間工学と衛生に配慮してキッチンを設計。座りながら手を伸ばして調理できるようにし、家事負担の軽減を図った。
自然の造形をモチーフにしたやわらかな曲線が、2人のデザインの持ち味だ。会場でオーロラのように波打つ壁は、ニューヨーク万国博覧会フィンランド館(38~39年)を再現した。傾いた構造で見る者に迫る。
アイノはスウェーデン語で「水の波紋」を意味するガラス器「ボルゲブリック」をデザイン。波紋の形は、手にして重ねる際に安定性を生む。36年にミラノ・トリエンナーレで金賞に輝いた。アルヴァの意匠とともに、イッタラ社のロングセラーとなっている。
アルヴァは、木材を曲げる特殊な加工技術を職人と開発。安価で量産できるモダンな家具を生み、アイノがアートディレクターとなった企業「アルテック」の事業で国際的に広げた。
2人は思いやりを形にしてきた。冷気や日光が患者に直接当たらないようサナトリウムを設計。洗面台の消音効果などにも気を配った。温かみがあり、身体に負担をかけない木製のいすは、病棟でも生かされた。
アイノが設計した別荘での家族団らんを伝える写真や映像がほほえましい。仕事に子育てに充実した日々だったろう。しかし、アイノは病に倒れ、49年に54歳でこの世を去った。臨終のアイノの横顔を、アルヴァが描いた。スケッチから深い悲しみとともに、夫婦の強い絆が伝わってくる。
29日まで。月曜と10日は休館(ただし9日は開館)。一般1600円ほか。兵庫県立美術館TEL078・262・1011