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共に84歳。芸術への尽きせぬ情熱を語り合う舘野泉さん(左)とコシノヒロコさん=大阪市北区、ザ・シンフォニーホール(撮影・秋山亮太)
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共に84歳。芸術への尽きせぬ情熱を語り合う舘野泉さん(左)とコシノヒロコさん=大阪市北区、ザ・シンフォニーホール(撮影・秋山亮太)
ファッションデザイナーコシノヒロコさん=大阪市北区、ザ・シンフォニーホール(撮影・秋山亮太)
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ファッションデザイナーコシノヒロコさん=大阪市北区、ザ・シンフォニーホール(撮影・秋山亮太)
ピアニスト・舘野泉さん=大阪市北区、ザ・シンフォニーホール(撮影・秋山亮太)
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ピアニスト・舘野泉さん=大阪市北区、ザ・シンフォニーホール(撮影・秋山亮太)

 19年前に脳出血のため右半身が不自由になり「左手のピアニスト」として再起した舘野泉さんと、芦屋と東京を拠点にする世界的なファッションデザイナー、コシノヒロコさんとは84歳で同い年だ。今も第一線で活躍する。11月、舘野さんが神戸でコンサートを開くのを前に、クラシック音楽への造詣も深いコシノさんと、演奏や創作への思いを語り合った。(以下敬称略)

 -活動の原動力は。

 コシノ 好きだからこそ続けてこられた。人生で好きなことをやって、一生を終えられたら幸せ。

 舘野 父も母も演奏家で、父は「音楽をやるほど人生で素晴らしいことはない」と話していた。4人のきょうだいはみな音楽家に。育った時代は終戦間近で音楽をするのも自由ではなかったけれど、僕たちはピアノやバイオリンを弾き、それがただ素直にうれしかった。「好き」という一語に尽きる。

 -子どものころに育んだ感性が今に生きている。

 コシノ 祖父は私が3歳のころから歌舞伎を見せてくれた。衣装やお化粧、三味線の音がきれいで、私の表現の根底にはその美に触れた体験がある。祖父が才能を引き出してくれたと言えるかもしれない。幼少期の感動は人生を左右し、大きな力になる。いいものを見せ、聞かせるのは、大人の責任ですごく大切。

 -舘野さんは20代後半でフィンランドに渡った。その頃と感覚は変わりましたか。

 舘野 僕は生まれたときから今まで、何も変わってません。19年前に脳出血で半身不随になって、2年間ピアノを弾けなかったが、あるとき「手が1本でも2本でも、音楽をやることに変わりはないんだ」ということが一瞬でわかったんです。「たいへんな経験をして人生観が変わったでしょう」と言われるけど、昔からやっていることを今度は左手だけでやる。両手でやってきたときと変わらない。

 コシノ あるがまま、なすがままですね。

 舘野 そうそう。

 コシノ 若いときは「あれもこれもしたい」だったけど、70歳くらいから自然体になった。「感じたことを正直に出せばいい」と。

 舘野 僕は生まれてからずっと「すごく好きだな」と感じたものを磨き続けている。どんなプログラムにしよう。新しいことやらなきゃなあって。考えているときが一番楽しい。

 -兵庫県立美術館での「コシノヒロコ展」閉幕の際、あることを宣言したとか。

 コシノ 人間は生きる望みがあれば、元気にやっていける。私が「10年先、もっとすごい展覧会をやる」とあいさつしたら、まわりのみんなも元気になった。

 -コロナ禍で閉塞感が漂う中、音楽やファッション、アートの役割は。

 コシノ 文化や芸術は、人間が生きるためのエネルギーの根源。コロナ禍での展覧会は大変だったけど、「世の中を元気に」と、神様が与えてくれた使命だと思った。

 舘野 決して「不要不急」じゃない。聞く人と弾き手が向かい合って気持ちの交流があるのがいい。徐々にコロナから抜け出し、大事なものに心を向けられるようになるといいね。

 コシノ 音楽は生で聞く。アートやファッションも、触れるような距離で見る。すると、感動が違う。若者がやる気やオリジナリティーを発揮するために、生で見て、聞いてほしい。

 舘野 僕は子どものころから「手職人」という言葉がすごく好きで。手で触って確かめる。手に取って、手を通じて…。僕は芸術家より「手職人」と呼ばれる方が好きです。手で土をこねくり回すような感じ。それは、かわいがっている、愛している、ということ。

 -同年代にメッセージは。

 コシノ 「先がない」なんて考え方はダメ。死ぬぎりぎりまで「これからやで~」と希望を持って生きられたなら、人生楽しい。

 舘野 これから何十年生きるつもりでも、ころっといくかもしれないし。神のみぞ知る。生きている間はこねくり回して…。

 コシノ 実は私、83歳でピアノを習い始めました。舘野さんの演奏、ぜひ聞いてみたい。すっごく楽しみです。

(まとめ・小林伸哉)

【こしの・ひろこ】1937年、大阪府岸和田市生まれ。ファッションデザイナー、コシノ3姉妹の長女。59年文化服装学院卒業。82年からパリコレクションに参加。和の美意識を織り込んだ意匠が世界中で高い評価を受ける。絵画などの制作でも才能を発揮する。

【たての・いずみ】1936年東京生まれ。60年に東京芸術大を首席卒業。64年からフィンランド・ヘルシンキで暮らしながら、演奏活動を行う。2002年に脳出血で倒れて右半身不随となったが、04年に「左手のピアニスト」として復活。20年に演奏生活60周年を迎えた。

     ◇     ◇

■舘野さんコンサート 11月神戸

 舘野泉~こころの音楽~(神戸新聞社、神戸新聞文化財団主催) 11月3日(水・祝)、神戸新聞松方ホール(神戸市中央区東川崎町1、JR神戸駅から徒歩10分)で14時15分開場、15時開演。演奏曲は、バッハ(ブラームス編)「シャコンヌ」、山田耕筰(梶谷修編)「赤とんぼ」、スクリャービン「左手のための二つの小品 作品9」の「前奏曲」と「夜想曲」、光永浩一郎「サムライ(舘野泉に捧ぐ)」ほか。文化芸術プロデューサー浦久俊彦さんが聞き手となり、舘野さんとのトークも。「左手のピアニスト」として復活を遂げた軌跡、人生や音楽への情熱をユーモアを交えて語る。

 入場料(全席指定)は、前売り一般4300円、松方ホール友の会会員4100円。当日はいずれも4700円。前売券は、ローソンチケット(Lコード:52876)、チケットぴあ(Pコード:199-023)、神戸国際会館プレイガイド(TEL078・230・3300)、松方ホールチケットオフィス(TEL078・362・7191)。問い合わせは同ホールチケットオフィス。

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