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郷土玩具の収集に生涯情熱を燃やす井上重義さん。郷愁を誘う品々ばかり=姫路市香寺町中仁野、日本玩具博物館(撮影・長嶺麻子)
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郷土玩具の収集に生涯情熱を燃やす井上重義さん。郷愁を誘う品々ばかり=姫路市香寺町中仁野、日本玩具博物館(撮影・長嶺麻子)
「ちりめん細工」も収集してきた井上重義さん。関連書籍の執筆、監修も務めている=姫路市香寺町中仁野、日本玩具博物館(撮影・長嶺麻子)
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「ちりめん細工」も収集してきた井上重義さん。関連書籍の執筆、監修も務めている=姫路市香寺町中仁野、日本玩具博物館(撮影・長嶺麻子)

 160カ国・地域の多種多様なおもちゃなど約9万点を所蔵する日本玩具博物館(兵庫県姫路市香寺町)。個人収集からスタートし、長い年月をかけて「ミシュラン・グリーンガイド」で二つ星に輝く私設博物館にしたのが井上重義館長(82)=同市=だ。「地域で心込めて手作りされてきたおもちゃには、ふるさとの文化が凝縮されている」と熱く語る。

 偉業の源泉は「誠実だった家族の生き方、そして出会いに恵まれたこと」にあるという。

 姫路市内で鍛冶屋をしていた父は、農具や漁具をこしらえていた。客の細かい注文にも応じ、仕事に妥協を許さなかった。「そんな職人仕事が、光が当たらないまま消えてゆく」。井上さんはやるせなさを感じていた。

 転機は、電鉄会社に勤めていた24歳の時。行きつけの書店で「日本の郷土玩具」(斎藤良輔著)と出合った。

 「子どもに関わる文化遺産が高度経済成長の中で評価されずに消えてゆく」状況が記され、父の姿が重なった。誰かが記録し残していくことの重要性を説く内容に、心が動かされた。

 少年時代に伝書バトを飼育するなど、元々、こつこつと物事に取り組むタイプだったという。本を頼りに全国の郷土玩具を訪ね歩こうと決めた。お金も時間も潤沢にあるわけではなく、収集の旅はもっぱら休日に夜行列車に乗り込んだ。

 ところが、各地の博物館や民俗資料館を訪ねても、たこなどの郷土玩具が展示されていることはまれ。老舗からは「海外の博物館からは注文が来るが、国内の博物館からは全くない」との声も聞いた。

 「日本人がその価値を見いだせないまま、失われてしまうのでは」。そんな思いが郷土玩具の博物館をつくる決断を後押しした。1974年11月、妻が所有する土地に自宅を新築した際、その一角に「井上郷土博物館」をオープンした。

 博物館運営は苦労の連続だったが、人との出会いが支えになった。郷土玩具の全国組織に入会したことが縁で知り合ったのが、灘中・高校の元国語教師で玩具収集家でもあった故橋本武さん。「人のまねをせずに自分の道を歩むように」と励まされた。

 活動が評価され、各地の収集家から資料の寄贈も相次いだ。収蔵品の増加とともに増築を続けるうち、日本でも有数の施設となり、84年には名称を「日本玩具博物館」と改めた。

 45歳で電鉄会社を退職し、館の運営に専念。女性の文化遺産にも光を当てたいと、着物の残り布を用いた伝統手芸「ちりめん細工」の収集も始め、今では一大拠点となっている。

 昨年来、新型コロナウイルス禍で来館者が激減し、試練が続く。それでも「大量生産の社会で消えゆくものを、守り、伝えることが私の使命」と公的支援などを求めて奔走する。いちずな心と知恵で苦境を乗り切る。(佐藤健介)

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