9年間の安倍・菅政権で兵庫はどう変わった? 地方創生に不満、デジタル化は一定評価
2021/10/02 20:30
神戸市内の街角に残る安倍晋三首相時代の自民党ポスター=神戸市中央区海岸通4(撮影・吉田敦史)
 衆院選を前に岸田文雄氏が自民党総裁に選出され、4日の臨時国会で新政権が誕生する。歴代最長の在任期間を誇った安倍晋三前首相と、その路線を継承した菅義偉首相による政権は計9年におよんだ。今後も政権への安倍氏の影響力が注目される一方、終局を迎えた安倍・菅政権の看板政策や大方針は、兵庫の現場にどんな変化をもたらしたのか。(石沢菜々子、中島摩子)
          
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■地方創生
 2015年の統一地方選をにらみ、安倍政権が打ち出した「地方創生」。担当大臣を置き、活性化や人口減少対策の交付金を自治体に配分した。
 志方東営農組合(加古川市)などの「綿人づくり事業」には16年度から3年間、交付金など計約1820万円が投入された。休耕田で綿花を栽培し、収穫イベントなどに延べ約820人を集めたが、狙いの転入者は皆無だった。
 同組合の丸山良作代表理事(69)は「その後、行政からは何もない。後継者は不足し、空き家も増えた。地方創生って何やったんや」と振り返る。
■女性活躍
 安倍政権が「地方創生」とともに掲げたのが「女性活躍」だ。16年、企業などに女性登用の計画策定を義務付ける女性活躍推進法が施行された。
 カーナビ大手のデンソーテン(神戸市兵庫区)では、15年度に4人だった女性管理職が今年は19人に。人財開発室ダイバーシティ推進課長の池上有紀さん(41)は「子育てをしながら働ける環境整備に加え、相応の立場や役割を担う人材育成が進んだ」と感じる。
 だが、非正規雇用への浸透に課題も。夫が転勤族で3人の子を育てる遠藤美希さん(40)は、転居してきた西宮市でパートの仕事を得るため約20社に応募した。「短時間でも働ける仕事が限られ、子どもの預け先の整備も十分でない」と話す。
■デジタル化
 政権を継承した菅首相が注力したのが、行政を主とする「社会全体のデジタル化」だった。その一端として、国は新型コロナウイルスワクチンの接種状況を一元管理するシステムを導入した。
 このシステムについて、神戸市の森浩三デジタル戦略部長(49)は「民間人材を活用し、自治体の意見も反映させて作り上げたという点に、大きな変化を感じる」と指摘する。今年9月に首相念願の「デジタル庁」が発足した。
 兵庫県中小企業家同友会の藤岡義己代表理事(62)は「デジタル人材の有無で、既に競争力に差が出てきている。格差が広がらないよう、新政権には人材育成支援の環境整備を進めてほしい」と話す。
■「命と健康」
 感染拡大中の東京五輪開催に「国民の命と健康を守るのが前提」と繰り返した菅首相。「切り札」と位置付けたワクチン接種の進展によって、死者や重症者の数は抑えられた。
 明石市の民間病院では5月の第4波でクラスター(感染者集団)が発生し、患者2人が亡くなったが、第5波では一人も重症化しなかった。看護部副部長(62)は「ワクチンの大きな効果だ」と話す。
 一方、五輪開催への疑問はくすぶる。神戸市の飲食店経営村田亮さん(40)は「命や健康が優先されたと思わない」。生活の維持に苦心し、客が戻るかどうかの不安の中、「五輪開催ありき」に不信感が募った。
 「首相から納得のいく説明がなかった」と話す村田さん。新政権には「地方にも届く、丁寧な情報発信を」と求める。