<手探りの攻防 21衆院選>(下)野党共闘 地方、異論根強く温度差

2021/10/16 12:19

国会議事堂(資料写真)=東京都千代田区永田町1

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 衆院解散から一夜明けた15日朝、立憲民主党の兵庫県連代表桜井周(51)=比例近畿=はJR伊丹駅前で声を張り上げた。長期政権の総括をしない自民党の批判を繰り返したが、肝心の「野党共闘」には一言も触れなかった。
 民進党の伊丹市議だった桜井は前回、希望の党を立ち上げて混乱を招いた東京都知事小池百合子のかつての地盤・兵庫6区で、県内ではただ一人、立民公認として立候補。自民前職に敗れたが、比例代表で復活し、県内唯一の野党議席を確保した。
 立民と共産党は今回、与野党の一騎打ちに持ち込むため、全国で候補者の一本化を加速させる。立民代表枝野幸男は政権交代すれば、共産と「閣外協力」を目指すことで合意。共闘姿勢を貫くが、最大の支持団体の連合には異論が根強く、こうした事情は地方との温度差を生んでいる。
 連合兵庫も共産と近づく立民に対し「民間の労組には拒否感が強く、共産にくみするのはあり得ない」とくぎを刺す。ただ、桜井にとって前回、候補擁立を取りやめて支援を受けた共産は、選挙区で勝ち抜くために不可欠な存在。水面下で接触し、両者の支援をにらんだ微妙な緊張感の中で選挙戦が近づく。
 衆院解散直後の14日夕、兵庫8区(尼崎市)で立候補を予定する共産新人の小村潤(46)が、神戸・元町の街頭に立った。
 共産が今回、県内の小選挙区で擁立するのは、過去最少の5選挙区。県庁所在地の1区での擁立を断念したため、空白区で党の支持を訴えるためだった。
 共産県委員会委員長の松田隆彦は15日、声明を発表し、多くの選挙区で一本化が進んだ現状を歓迎した。だが、県委員会のあるお膝元で、県内で唯一、立民と競合する2区に記者の質問が及ぶと表情を曇らせた。
 「ここは(立民に)譲ってほしかったが…。これ以上、候補者を立てないと、比例代表の得票に影響する」。県内に10人を擁立した前回の得票は、全選挙区に立てた前々回より8万票以上目減りした。共闘の限界が見え隠れする。
     ◇
 「自民をピリッとさせなあかん。立民ではあかん」。日本維新の会代表で大阪市長松井一郎は、与野党にくみしない「第三極」の立場を強調する。県内では過去最多の9人の擁立を予定し、7選挙区で自民と立民の対決に割って入る。
 松井と近い前首相菅義偉が退陣し、政権の後ろ盾を失った。岸田政権では一転して対決姿勢を強め、「自公の補完勢力」とされた路線からかじを切り始めた。
 現在、衆院議員の前職は10人で、うち7人は大阪を地盤とする。首都圏などへの進出を目指し、なりふり構わない姿勢を見せる。
 県内では衆院解散直前、「保守王国」とされ、維新の勢力が弱い12区で、無所属で立つ予定だった新人を公認候補に取り込んだ。県組織幹部は「党本部の戦略は、比例代表の得票を伸ばすため、候補者数を増やすことだ」と打ち明ける。
 「自民の票をごっそり取る。そうすれば小選挙区での勝利も見える」と党幹部。維新の路線転換は、県内の構図にどんな変化をもたらすのか。=敬称略=
(衆院選取材班)

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