衆院選 有権者が「一票」に込めた思いは?

2021/11/02 05:30

衆院選投開票から一夜明け、街頭で通行人に頭を下げる当選者=1日午前、神戸市中央区(撮影・秋山亮太)

 衆院選の投開票が終わり、兵庫県内の政党間パワーバランスが大きく変わった。自民、公明両党は比例復活を含め12人が議席を維持したものの、9人が議席を獲得した日本維新の会が対峙(たいじ)する。有権者はどういう思いで投票したのか-。「格差を是正して改革を」「将来につけを回さないで」。厳しい指摘が続き、政府の新型コロナウイルス対策を批判した。 関連ニュース 首相進退「本音分からぬ」 自民・斎藤前経産相 「首相は選挙大敗の責任を」 自民・小林氏、重ねて要求 首相進退「自身で決断を」 自民・小林氏、大敗の引責

 「しがらみがなく、大阪で実行した改革を、兵庫や国政でも期待できるから」。小選挙区、比例代表ともに維新に投じた加古川市の男性(73)は、その理由をこう語る。政治家の給与カットも改革の例に挙げ、「今の社会は格差が大きくなっている。もっと優しい政治をして、国民みんなが住みよい福祉社会になれば」と願った。
 無党派層という広告関連会社社長の男性(57)=神戸市東灘区=も、比例で維新を選んだ。維新副代表の吉村洋文・大阪府知事のコロナ対応を「スピーディーできっちりしている」と評価する一方、政権の対応の遅さを指摘。コロナの影響で仕事量が一時減ったといい、「日本の経済が世界から取り残されている」と危機感を抱く。
 野党第1党の立憲民主党を選んだ票も、政権への怒りが込められていた。部落差別問題の解決に取り組む団体職員の男性(48)=神戸市灘区=は「(森友学園を巡る)文書改ざん問題などで非常に強権的だった」と断じ、人権を重視する政策を求めた。小選挙区で立民に投じた主婦(78)=丹波篠山市=も「コロナ禍で仕事を失った若い人や子育て世代への支援を進めて」と話した。
 一方、自民の支持者も今後の政権運営に注文をつけた。会社員女性(41)=洲本市=が「現状維持」を選んだのは、政権交代をしても改善が見込めないのが理由だった。10歳未満の4児を育てているが、3歳の子が保育園に入所できず、職場復帰を遅らせた経験も。「子どもを育てるにはお金がかかるので、将来を考えて少しでも早く復帰したい。全国のお母さんのために『待機児童ゼロ』を目指して」と、子育て施策の充実を求めた。(衆院選取材班)
■「維新政権批判票の受け皿に」
【神戸大大学院品田裕教授】
 日本維新の会の躍進は予想以上だった。背景には二つあると思う。
 まず、大阪での維新人気が兵庫にも幅広く波及した。新型コロナウイルス対応で注目された副代表の吉村洋文・大阪府知事の知名度が追い風になった。
 維新は今回、首都圏や兵庫など大阪以外でも積極的に候補者を擁立し、全国的な政党を目指そうと支持を呼びかけた。「改革」を前面に出し、大阪での実績をうまくアピールできた。二つ目は、政権批判票を取り込んだ点だろう。有権者には長期政権や、不手際が目立った新型コロナ対策などへの不満が積もっていた。
 立憲民主党や共産党などによる「野党共闘」は基本政策が異なる連携と捉え、抵抗を覚える有権者も少なくなかった。無党派層をはじめ、与野党どちらにも共感できない層にとって「第三極」としての維新が受け皿となった。
 野党共闘で非共産、非自民の有権者が維新に流れ、躍進につながる要因となった可能性もある。大物現職が苦戦するケースが相次いだのは、野党共闘に加え、旧態依然とした政治に反発を覚える人が多かったからだろう。(聞き手・末永陽子)

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