古典絵巻・稲生物怪録を「まんが訳」に 神戸芸工大助教ら制作
2021/11/16 23:11
コミカライズと異なる、まんが訳の手法を説明する山本忠宏助教=神戸芸術工科大
絵巻の新しい読み方を提示する「まんが訳 稲生物怪録(いのうもののけろく)」が出版された。神戸芸術工科大(神戸市西区)の研究と創作がベースになっており、編者の山本忠宏・同大助教(漫画表現史)は「古典への入り口にもなるのでは」と話す。(田中真治)
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「稲生-」は、三次藩(広島県)に実在した若侍・稲生平太郎が化け物に連夜襲われる怪異集。書物や絵巻として幕末に人気を博した。
絵巻は、物語を説明する絵と文章(詞書(ことばがき))から成るが、絵の枚数は多くない。「まんが訳」とは、1枚の絵に描かれた要素を複数のこまに切り出し、こまの大小や吹き出しなどで読みやすく構成したものだ。
「絵巻の素材と現代語訳に忠実な翻訳作業」と山本助教。トリミングを変えながら謎の物体を徐々に明らかにしたり、アップにした顔やしぐさで感情を表したりと、「どんな工夫をしているか、絵巻の画像と見比べてもらうとよく分かる」と話す。
まんが訳はもともと同大で、漫画の方法論を学生に理解させるため、漫画原作者で批評家の大塚英志氏(現・国際日本文化研究センター教授)が提案。山本助教が漫画の実作者であるゼミ生らと取り組んできた。
日文研が所蔵する絵巻をウェブで公開していることから、「大衆文化研究プロジェクト」の一環として、大塚氏の監修による本格的な制作に発展。昨年の「酒呑童子(しゅてんどうじ)絵巻」に続く出版で、関心を集めている。
ちくま新書、1078円。