神戸からブラジルへ 思い馳せ 日本画家山下和也さんが神戸で個展

2021/11/23 10:43

港で出航時に投げられたカラフルなテープを生かし、作品を手がけた山下和也さん=神戸市中央区山本通3、神戸市立海外移住と文化の交流センター

 ここから海を望んで浮かんだのは新天地への期待か、不安か-。神戸からブラジルへ渡った移民の歴史に触発された日本画家山下和也さん(43)=神戸市垂水区=による個展「あいまに海を眺めている」が、神戸市立海外移住と文化の交流センター(同市中央区)で開催中だ。「海を眺めること」を題材に、立体表現や絵など約90点を展示する。 関連ニュース 加西市、再生エネルギー浸透へ新会社 太陽光発電所を整備、公共施設手始めに供給目指す 神戸スティーラーズ、応援しよう 県民対象に300円で観戦券販売 1月19日ノエスタ 楽天・小深田「また受賞を」 ソフトバンク育成・津嘉山「プロで頑張る」 神戸国際大付高OB会が激励

 同センターの建物は1928年、移住者を送り出す「国立移民収容所」として開設。改称を重ねて71年の閉鎖まで、移住前の手続きや身支度、ポルトガル語の研修などに使われた。石川達三が移民の苦難を描き、第1回芥川賞に輝いた小説「蒼氓」の舞台でもある。
 山下さんは「C.A.P.(芸術と計画会議)」のメンバーで、同センター4階で創作している。「『蒼氓』に出てくる灰色の雨や船は、ここから見えたんだなあと、ふと思う」という。
 コロナ禍で海を見る機会が増えて気づいた。「身動きできない時間と、移民が出発を待つ時間。似ているようで、近寄っていける感覚がした」。歴史を学んで創作するうち「蒼氓は私たちのことだ」と身近に感じるようになった。
 移民船の出航を彩るカラフルなテープを生かしたり、郷愁や思慕などを意味するポルトガル語「Saudade(サウダージ)」を波のようにドローイングしたり。海を淡く墨で描いた絵画「蒼氓」からは、大海原に出る移民の心に想像が巡る。
 「日常的に眺める海や光は、鑑賞者にそれぞれの記憶や物語を想起させる」と山下さん。同センター内の移住ミュージアムも訪れて「建物全体で歴史を体感してほしい」と願う。
 28日まで。午前10時~午後7時。無料。会期中無休。C.A.P.TEL078・222・1003
(小林伸哉)

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