廃虚の女王と幻の遊園地、跡地を活用 摩耶山、昭和の雰囲気伝え「遺跡化」目指す
2021/11/30 12:19
大阪湾が一望でき、人気を集めたマウント・コースター(1962年)
摩耶山(神戸市灘区)の山上にかつて、親子連れらでにぎわった山上観光の目玉施設「奥摩耶遊園地」があった。いまや見る影はないが、走行中に大阪湾を望む眺望が人気を集めた「マウント・コースター」の痕跡はわずかに残る。中腹には、廃虚ファンを呼ぶ旧「摩耶観光ホテル」があり、地元の活性化を図る団体は、昭和の匂いを伝える「摩耶(マヤ)遺跡」として名を連ねようともくろむ。(長嶺麻子)
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奥摩耶遊園地は、市交通局が1955(昭和30)年の摩耶ロープウェーの開業に合わせて開発。コースターのほかスケート場や野外ステージなどもあったが、70年代初頭に姿を消したという。現在の「まやビューライン」(摩耶ケーブル、摩耶ロープウェー)の星の駅から、摩耶自然観察園までが敷地に含まれた。
摩耶山といえば、「日本三大夜景」で知られ、100万ドルの夜景を望む掬星台が有名。さらに今年、廃墟としては異例の国登録有形文化財となった旧「摩耶観光ホテル」が中腹にある。昭和初期のたたずまいを残し、全国から廃虚の愛好者が見学に訪れる。
コースターの痕跡は、遊歩道などのある現在の「子どもの丘」の一画にある。標高702メートルの山頂に近く、丘の起伏を生かした一周240メートルのコースからは大阪湾と阪神間の住宅街が望めた。「遺跡」へのアクセス道などを整えようとする地元有志が着目。今秋、旧乗り場付近のコンクリート壁のコケを除去し、ペンキで書かれていた「ジェットコースター」の文字が見られるようになった。
旧「摩耶観光ホテル」は普段は立ち入り禁止だが、摩耶山再生の会事務局長の慈憲一さん(55)は「マウント・コースター跡は、いつでも誰でもアクセスできるマヤ遺跡。ぜひ一度訪れてほしい」と話している。