家屋に迫る炎、息絶えた人々…リポーターが見た1・17「俺が語らねば」 神戸で朗読劇上演へ
2022/01/06 14:40
震災の経験を伝える朗読劇の稽古をする(右から)三条杜夫さん、田村綾さん、ひふみようこさん=喫茶店「クレセント」
放送作家でフリーアナウンサーの三条杜夫(もりお)さん(74)=神戸市垂水区=が阪神・淡路大震災の取材メモを基に作った朗読劇が13日、神戸・三宮の喫茶店で初めて上演される。生々しい記憶がよぎり、長く震災を語れなかった三条さん。震災から27年を前に、当時を知るジャーナリストらが減る中、「俺が語らずして誰が語る」と思うようになり、経験を伝えようと決めた。惨状や命の尊さを描いた3作品を披露する。(大橋凜太郎)
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三条さんは1995年1月17日の大地震発生時、ラジオ関西のリポーターを務めていた。自宅は一部損壊の被害を受け、公共交通機関は完全まひ状態。同19日から徒歩で取材を始めた。
大火に見舞われた須磨や長田など神戸市内をくまなく歩き、火がくすぶった様子などをリポートした。一方で、人が焼けるにおいなど言葉にできない状況も目の当たりにした。カメラのシャッターを切れず、録音もできなかった。「あまりにも悲しくて、合掌することしかできなかった」
次第に三条さんは取材体験を口にできなくなった。追悼式典で揺れる炎を見ると、倒壊家屋の下で生きているのに火が迫り、亡くなっていった人たちを思い出し、ただ苦しかった。
近年、震災を知るジャーナリストが次々と現役を退いたことをきっかけに、自ら語り継ごうと決心。生々しさを和らげようと、親交のある朗読家のひふみようこさん=同市東灘区=と音楽家の田村綾さん=大阪市福島区=に協力を依頼し、朗読劇を作り上げた。
上演するのは、倒壊した建物の下で童謡に励まされながら息絶えていった少女を描いた「象さんに乗って旅立った少女」、息子を置いて火災から逃れたことを後悔する父の記憶をたどった「生きながら燃えて」、亡くなった野球少年に手向けられたバットを巡る「焼け跡のバット」の3作品。
ひふみさんが朗読し、田村さんがピアノを即興で演奏して情景を表現する。三条さんは家族や家を失った人らの厳しい震災後の道のりにも触れ、「生き残った者も大変だった。それが震災だと伝えたい」と話す。
13日は午後2時~3時半、神戸市中央区琴ノ緒町5の喫茶店「クレセント」で。参加費2千円(コーヒー付き)。要予約。三条さんTEL078・781・7881