「阪神・淡路」遺族らの肉声集めた証言映像 若者たちがインスタで公開へ
2022/01/12 16:00
動画を編集する(左から)グループメンバーの藤原祐弥さん、石田瞳さん、長谷川侑翔(ゆうと)さん=神戸市長田区若松町5(撮影・大森 武)
阪神・淡路大震災後に生まれた若者でつくるグループ「1・17希望の架け橋」が、被災者や遺族らの肉声を集めた証言映像を制作し、インターネット上で公開を始める。間もなく発生から27年を迎える震災は記憶の風化が懸念されるが、メンバーは「震災を知らない世代も命の尊さを伝えられる」と声をそろえる。グループはその名の通り、震災の教訓を次世代につなぐ「架け橋」を担う。(藤井伸哉)
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グループは2020年10月結成。神戸市内などの中高生や大学生、会社員ら15~24歳の35人が、遺族らから被災状況を聞き取って語り継ぐ活動や、追悼行事のボランティアに取り組む。
動画制作のきっかけは、遺族らの生々しい証言だった。昨年の追悼行事で話を聞いた40代男性は、あの日の揺れで友人を失った。「前日も元気だったのに、突然、一生会えなくなった」と涙を流した。
震災経験がないメンバーにとって、どこか歴史の出来事のような感覚がある。「だからこそ、語り継ぐことが大切」と決意。被災者の言葉や雰囲気が伝わるように、文章ではなく映像に収めることにした。
動画は約15分。昨年12月にあった神戸ルミナリエの代替行事を中心に、10~70代の11人から証言を集めた。70代の男性は当時、東京の下宿先に戻ろうとした息子を引き留めた。体調が悪い息子への配慮だったが、その翌日、自宅で被災した。「息子の顔は今でも鮮明。死に追い込んでしまった」と後悔が尽きない。
神戸・長田の住宅を襲った猛火や追悼行事の様子も収録。犠牲者を悼むガス灯「1・17希望の灯(あか)り」に刻まれた「この灯りは 奪われた すべてのいのちと 生き残った わたしたちの思いを むすびつなぐ」の文言はナレーションにした。大学1年の石田瞳さん(19)が何十回も編集し直したという。
会社員でグループ代表の藤原祐弥さん(19)は「つらい思いをした遺族に声を掛けるのは勇気がいるが、伝えたい思いが勝った。若い世代を中心に多くの人に見てほしい」と話した。
動画はグループの写真共有アプリ「インスタグラム」などで17日をめどに公開される。
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