県消防防災航空隊が発足25年 全国唯一、神戸市と共同で自主運航
2022/01/14 06:00
出動に向けて駆けだす兵庫県消防防災航空隊員と消防防災ヘリ=神戸市中央区神戸空港(撮影・坂井萌香)
阪神・淡路大震災を機に組織された兵庫県消防防災航空隊が発足から25年を迎えた。ヘリで山岳救助や救急搬送を担い、2004年の台風23号や05年の尼崎JR脱線事故などで活躍した。消防防災ヘリを運航する40道県の多くが民間委託しているが、兵庫県は唯一、神戸市との共同で自主運航を維持。操縦士らの担い手が不足する中、総務省消防庁は共同運航のモデルとして「兵庫・神戸方式」に注目する。
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県消防防災航空隊は、震災当時、負傷者搬送や物資輸送などでヘリが力を発揮したことから、県内自治体の各消防本部から隊員8人の派遣を受け、1996年10月に発足。04年に神戸市消防局航空機動隊と統合し、共同運航を始めた。
県が1機、市が2機所有するヘリを活用。それぞれ年間に2、3カ月、点検で運航できない期間があるが、3機を一体運用することで、常時2機が出動可能な体制を整えた。
18年から神戸空港島に拠点を置き、日没後の離着陸も可能になった。隊員27人のうち、出動要請に応じて最大6人がヘリに乗り込む。六甲山なら5分、日本海側までも35分で到達する速さが強みだ。
04年の台風23号では、円山川が決壊し大規模な浸水被害を受けた豊岡市でヘリ2機が活動。逃げ遅れるなどした約20人を救出、搬送した。乗客106人が犠牲となった尼崎JR脱線事故でも負傷者8人を搬送。11年の東日本大震災では岩手県に1機が派遣され、患者の転院搬送や不明者の捜索に当たった。
20年の出動件数は計423件に上り、東京消防庁の450件と肩を並べる。離島を抱え、救急が全体の8割を占める東京に対し、兵庫では建物火災での活動に加え、山岳救助も多く、幅広い活動を展開する。
宮本卓弥隊長(51)は「迅速性と機動性を兼ね備え、地上部隊では難しい場所でも活動できる」と強調。南海トラフ巨大地震に備え、「発生すれば素早く広範囲の情報収集を行い、地上部隊の活動に貢献したい」と気を引き締める。
消防庁は航空隊の維持に向け、自治体同士による共同運航を視野に22年度、モデル事業の実施や検討会議の設置を計画。「先進的に取り組んできた兵庫の事例は参考になる」とする。(大島光貴)
【消防防災航空隊】 40道県と東京消防庁、大阪市など政令市の消防機関が設置。東京消防庁と政令市の消防機関は自前の職員で構成し、いずれも自主運航している。ただ、40道県の航空隊のうち36道県は民間に運航を委託。人材確保の難しさが背景にあるとされ、自主運航は兵庫などに限られる。
【特集ページ】阪神・淡路大震災