<記憶を見る 人と防災未来センターから>5時46分で止まった時計 震災27年

2022/01/14 12:40

5時46分を指したまま止まった数々の被災時計

 60秒を数えれば過ぎるはずだった「5時46分」がぴたりと止まっていた。 関連ニュース 最後のトーホーストア閉店 神戸の阪神大石駅店に惜しむ列 兵庫で61年の歴史に幕 神戸マラソン2024、復興の地を2万人駆ける 阪神・淡路大震災から来年1月17日で30年 神戸の街、2万人が駆け抜ける 「神戸マラソン2024」17日号砲 終盤の難所は今大会が最後に

 人と防災未来センターに寄贈された阪神・淡路大震災の「被災時計」は25点。たんすの下敷きになった目覚まし時計、壁から落ちてガラスの盤面が割れた掛け時計、ゼンマイが壊れて巻けない置き時計…。
 「やっと持ち出せるようになった、という言葉をよく聞きます」と担当者。「踏ん切りをつけるために、と話す人も。気持ちの整理にかかる時間はそれぞれ違うんですね」
 神戸市須磨区の市村俊和さん(80)は2021年12月、結婚記念の置き時計を同センターへ。新婚当時から暮らしたJR六甲道駅近くの平屋は全壊し、家の中から時計を見つけ出した。
 当時、感情が追い付かない光景を多く目の当たりにした。拭えない記憶とともにある時計は、7回の転居を経ても手放せなかった。
 19年春、妻の聡美さんは先立った。「自分が死んだら時計は処分される。大切に残してほしいと思った」
 寄贈する直前、市村さんは時計をじっくりと見た。ずっと46分を指していた針が2分進んでいた。(鈴木雅之)
=おわり=
【特集ページ】阪神・淡路大震災

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