刈ってもすぐ生える…道路脇の雑草対策に革命! 県職員ら考案
2022/02/07 11:30
熱湯とシリコーンを使った除草方法のマニュアルを作った兵庫県西宮土木事務所の職員ら=西宮市内
道路脇や公共スペースの雑草を取り除くための予算が減っているため、兵庫県西宮土木事務所の職員らが効率的な除草方法の研究に取り組んでいる。試行錯誤の結果、行き着いたのは「熱湯とシリコーン」。多くの人に試してもらうため、マニュアルも公開した。知見を集めて効果的な実施方法を確立する狙いだが、果たして実用化はなるか-。(山岸洋介)
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アスファルトやコンクリートブロックの隙間の除草は手間がかかり、刈ってもすぐに生えてくる。さらに、自治体の維持管理費は減少傾向で、西宮土木事務所でも年2回だった県道の草刈りが、行財政改革による予算カットで年1回しかできなくなったという。
そこで、同事務所は2020年の夏ごろ、管内の尼崎、西宮、芦屋市にも声を掛け、若手・中堅職員による研究会を結成。塩水や酢、重曹水などを試したが、根の部分に熱湯をかけて枯死させる方法が楽で確実だと分かった。湯をかけて2~3分間、地中の温度を57度以上に保てば根から枯れるという。
さらに、土にシリコーンを注入すれば草が生えなくなることも判明。アリを研究する県立人と自然の博物館(三田市)の三橋弘宗主任研究員の「外来種ヒアリが巣を作らないようコンクリートの隙間にシリコーンを入れると、雑草も顔を出さなくなった」という情報がヒントになった。
研究会はやかんで湯を注ぎ、ドレッシング容器でシリコーンを注ぐなど手作業で実験してきたが、昨年、実用化に向けて具体的な技術や資材を募るアイデアコンテストを開催。県内外の5社から高圧洗浄機や温水噴射機などを使った施工法の案が寄せられた。
一方、実験で使った身近な道具があれば、誰でも手軽にできることをPRしようと、作業を簡単にまとめたマニュアルを作成。事務所のホームページで公開している。試した結果や疑問点、感想を、会員制交流サイト(SNS)で「#隙間除草」というハッシュタグ(検索用の目印)をつけて投稿してもらう。
同事務所の一宮大祐所長は「実用化できれば、維持管理のコスト削減が期待できる。多くの人と知見を共有したい」としている。
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■実用化へ住民参加想定、9日にフォーラム
膨大な手間がかかる道路の雑草対策に、県西宮土木事務所が「もっと楽な方法」を探る先には、地域住民との連携がある。少子高齢化と人口減少が進めば、これまでのような行政サービスを保てなくなる可能性があるといい、将来的に地域住民に除草を委託したり、分担したりすることも想定している。
熱湯とシリコーンによる除草方法は、特別な道具や技術がいらず、一度すれば数年は草が生えないとみられる。一宮大祐所長は「やり方が確立できれば、公園や駅前などの公共空間の除草を委託したり、作業工程ごとに分担したりすることも考えられる」と話す。
一方、官民連携に詳しいNPO法人コミュニティリンクの中西雅幸代表理事は「行政の下請けを地域に押し付けるような発想では行き詰まる」と指摘。例えば、浮いた予算を地元の買い物に使えるポイントとして還元したり、新たなビジネス機会を提供したりするなど「参加者に利点のある仕組みをセットでつくるべき」とする。
西宮土木事務所は9日午後1時~4時半にオンラインのフォーラムを開催。中西さんを交えて「お手軽インフラ修繕から行政施策への住民参加を考える」と題したミニトークや、除草技術の実演講習などを行う。同事務所TEL0798・39・1541
除草フォーラム@阪神南(https://hyogo-tech-platform.jp/forum1/)