おいしさ、見た目追求 ビーガン専門店の人気拡大

2022/02/17 06:00

「グリナリー」のスムージーとスコーン=神戸市中央区海岸通4

 乳製品などを含めて動物由来の食品を口にしないビーガン(完全菜食主義者)向けの専門飲食店が、神戸市内でもじわりと増えている。美容と健康だけでなく、動物や環境にも配慮した生活スタイルの一つとして認知されるが、「おいしくない、よく分からない」との印象もつきまとうビーガン食。味はもちろん、見た目も工夫したメニューで幅広い人の心をつかもうとしている。(赤松沙和) 関連ニュース 【写真】「リッチョドーロ」のジェラート 【写真】「ビーガンカフェ Thallo」のチョコバナナタルト 姫路市内、飲食店での「ハラル」「ビーガン」対応進む

 おしゃれな雑貨、古着の店などが並ぶ神戸・乙仲通に、カフェ「greenery(グリナリー)」がある。看板メニューは、ケールやドラゴンフルーツ、ブルーベリーなど果物たっぷりのスムージーだ。
 乳製品を使わない8種類(520円から)を用意。追加料金で幾何学的な模様を表面に施す「アートスムージー」も提供する。野菜などで色付けしたココナツクリームで描いており、女性を中心に「映える」と人気を集める。
 日替わりのスコーン(250円から)は、卵や牛乳ではなく豆乳などを代用する。製造工程で動物の骨が使われるという白砂糖の代わりに、てんさい糖やメープルシロップ、多肉植物から作られるアガベシロップなどを使用する。
 4年前に神戸・北野で開業した同店は、新型コロナウイルス禍で集客減に見舞われた。地元の人にも気軽にビーガン食に親しんでもらおうと、今の場所に移転した。同店の笹島正和さん(42)は「環境に配慮する『エシカル(倫理的な)消費』も注目されており、選択肢の一つになれば」と話す。
 神戸・元町の「ビーガンカフェ Thallo(タロ)」は、小麦粉を使わない「グルテンフリー」にも対応する。経営する加納まり子さん(55)は、近所の猫の死を機に肉類が食べられなくなって菜食となり、17年にオープンした。ベジスパイスカレーランチ(1600円)、おむすびプレート(1200円)、米粉を使ったタルトなどをそろえる。マヨネーズは豆乳で手作りし、塩こうじや甘酒などの発酵調味料も活用して味に幅を持たせる。
 コロナ禍前は、ビーガン対応の食事を求める訪日客でにぎわった。「日本人は精進料理になじみがある。国際色の豊かな神戸からビーガンのおいしさを発信したい」
 神戸・三宮のジェラート店「リッチョドーロ」は、主原料の卵や牛乳を一切使わない。イタリア料理のシェフだった末廣憲賴さん(45)が、食物アレルギーのある息子に、安心でおいしいスイーツを食べさせたいとの思いから開発した。ココナツミルクやライスミルクを使用し、30種類以上のジェラートを考案した。
 17年の開業以降、アレルギーの人のほか、ビーガンの客も増えているという。末廣さんは「食の多様性は広がっている。マイノリティー(少数派)でも、求める人に愛される商品を提供したい」と話す。
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■世界で市場規模拡大、新たな代用商品も続々
 日本ヴィーガン協会(東京)などによると、ベジタリアン(菜食主義者)の一種であるビーガンは、肉や魚介類に加えて、卵や乳製品、はちみつなども食べないことから「完全菜食主義者」と呼ばれる。
 ビーガンも生活スタイルによって細分化される。食物アレルギーや健康上の理由から、食生活のみで実践する「ダイエタリービーガン」のほか、衣類や化粧品なども含めて動物由来の製品を日常から排除する「エシカルビーガン」もいる。
 観光庁によると、ベジタリアンの世界人口は年々増加し、2018年は約6・3億人。ベジタリアンやビーガン向けの食品市場は、欧米を中心に世界規模で拡大しているという。
 国内でもプラントベース(植物由来)の食品需要が増えており、各社が関連商品を相次ぎ投入する。
 江崎グリコ(大阪市)は豆乳やアーモンドペーストを使った「植物生まれのプッチンプリン」を発売。神明ホールディングス(神戸市中央区)傘下の米穀卸大手、神明(東京)は、酒かすや米粉で風味を再現したチーズを業務用に開発するなど、代替肉以外にも新商品が登場している。

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