兵庫など4県の知的障害者施設 1日20時間以上、居室を施錠 10年継続の例も

2022/02/23 22:30

神戸新聞NEXT

 兵庫、埼玉、新潟、広島各県の公的な知的障害者施設で、一部の入所者を1日20時間以上、外側から施錠した部屋に閉じ込める対応が常態化していることが23日、共同通信の全国調査で分かった。いずれも県立施設や県の外郭団体である社会福祉事業団の運営施設。広島では24時間施錠という人がいるほか、埼玉、新潟、兵庫では長時間の施錠が10年以上続いている例が見られた。 関連ニュース 「あなたのために」「良かれと思って」はNG 「意思決定」考えるセミナーに100人超 障害者の願い尊重、自立生活支えて <カビの生えた病棟でー神出病院虐待事件3年>(9)雨宮処凛さんに聞く「弱い者がさらに弱い者をたたく構図」 障害者虐待疑いで3度目の逮捕 顔に漂白剤かける 猪名川町のグループホーム元職員の男


 「強度の行動障害のため自傷や他害行為があり、安全面からやむを得ない」などと説明しているが、障害福祉の関係者からは「虐待に当たる」との批判が出ている。
 県立の障害者施設を巡っては、神奈川県で入所者を1日20時間以上、施錠していたことが昨年9月に表面化。共同通信はこれを受け、都道府県立や、都道府県の福祉関係の事業団が運営する知的障害者の入所施設を対象に、主に昨年10~12月の身体拘束の状況を取材や情報公開請求で調べた。
 兵庫県社会福祉事業団が運営する施設では、1日22時間以上の施錠が5人。うち2人は10年以上前から続いている。ほかにも1日約11~16時間施錠が6人いた。
 同事業団は「多くの利用者を少数の夜勤者で支援しており、(身体拘束廃止には)少人数での生活が可能となるようなハード面の改善などが必要」とし、「夜間の施錠時間を短縮するため、夜勤職員の増員を図る」と話している。
 埼玉県社会福祉事業団が運営する県立「嵐山郷」(嵐山町)では、約320人の入所者のうち、自閉症で強度行動障害などがある11人が1日約20時間、居室を施錠されていた。年数が最も長い人では約15年間続いている。このほか1日約10~19時間施錠が約30人いる。
 新潟では県直営の「コロニーにいがた白岩の里」(長岡市)で、約130人の入所者のうち1日20時間以上の施錠が4人。うち2人は10年以上続いている。居室施錠の対象は全体では28人おり、平均で約10時間。
 広島では、県福祉事業団が運営する県立「松陽寮」(東広島市)で約2年前から1人がほぼ終日施錠。昨年11月は1カ月のうち約10日間、24時間施錠されていた。
 東京都社会福祉事業団は10時間以上の施錠の例が複数あることを認めたが、詳細は明らかにしなかった。このほか、福島と茨城の県立、島根県社会福祉事業団の施設で十数時間の例があった。
 これ以外の道府県では、長時間の施錠をしているとの回答はなかった。

 【障害者施設の身体拘束】 厚生労働省の基準や手引は、緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束や行動制限を禁じている。居室施錠も拘束の一つに位置付けられている。拘束する場合は①本人や第三者の生命、身体などが危険にさらされる可能性が著しく高い「切迫性」②他に方法がない「非代替性」③「一時性」-という3要件を満たす必要がある。「拘束が日常化すると、深刻な虐待につながる危険がある」とした上で、支援技術が十分でないことが原因の場合が多いとしている。

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