卒業や就職など人生の節目で立ち止まり、あえてインターンシップやボランティアなどの社会体験をする「ギャップイヤー」が注目されている。1960年代にイギリスで誕生し、「ギャップ=隙間」期間を有効活用する考え方。卒業、進学、就職と連続してキャリアを積むことに、疑問や違和感を抱く若者は少なくない。新型コロナウイルス感染拡大で、自らの将来を見つめ直す時間ができたことも選択を後押ししている。(谷口夏乃)
昨年3月に大学を卒業した兵庫県丹波市在住の清洲理子さん(23)。昨年12月に同県姫路市であった「ミス日本酒」兵庫大会でグランプリを受賞し、今年7月に京都で行われる最終選考会に向け準備を進めつつ、ギャップイヤーを過ごす。
大学に入学したころから、就職活動には消極的だった。「新卒で就職するだけが正解じゃないと考えていた。社会経験を積み、ゆっくり自分を見つめ直したいと思った」と、振り返る。
大学3年生になり「日本人がいない所に行きたい」と、タイに交換留学した。現地の人たちと交流するにつれ、日本人として伝統文化などを詳しく知らないことを痛感。日本文化への興味が湧いた。
帰国後、父親の強い勧めで就職活動を始めたものの、コロナ禍で希望した航空業界の採用が中止に。「みんなには逆風だけど、(私には)追い風やな、と思いました」
卒業後の海外渡航は断念せざるを得なかった。思い立ったのは、この期間を有効に使い、日本文化の理解を深めることだった。
銘酒「奥丹波」で知られる山名酒蔵(丹波市市島町)で半年間、蔵人として酒造りに携わった。体力的に厳しく働き続けることは断念したが、日本酒や日本文化を広めるアンバサダーを選ぶ同大会に応募。「常に世界が目標。海外はユニークな経験が就職で生きる。アピールできる体験をしたかった」と力強い。
就労した職種は多彩だ。コーヒーショップ▽ハンバーガー屋▽農業▽カレーの移動販売▽巫女-など、興味がある仕事にはより好みせずチャレンジした。現在は酒造り以外の醸造を学ぶため、足立醸造(兵庫県多可町)で働く。
周りの学生とは違う道を進んだ清洲さん。「どう進むべきか、かなり悩んだ。でも、経験を積むことで何かが見えてきた」
◇
任意団体「日本ギャップイヤー協会」会長を務めるナヤー友里佳さん(20)=静岡県御前崎市=は高校卒業後、マレーシアの大学に留学予定だったが、コロナ禍で白紙になった。ステイホーム中の2020年11月、同協会を立ち上げた。
「進路が決まらず、フリーターやニートと呼ばれることに抵抗があった。海外にはギャップイヤーという前向きな言葉がある。もっと浸透すれば、社会が変わるんじゃないか、と思った」と、設立趣旨を語る。
自身はその後、デンマークの全寮制の成人教育機関を見つけ、20年12月末に渡航。試験が一切なく、人生について考える学校と言われている。13カ国の仲間たちと半年間過ごした。友人の家に泊まりながら欧州を旅し、イタリアでホームステイボランティアも経験した。
21年8月に帰国し、現在は英会話講師や市民協働センター員として働く。
仕事の傍ら、ネットサイト「note(ノート)」でギャップイヤー経験者のインタビューを掲載。ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で毎月7日、お話会も開く。ナヤーさんは「コロナ禍でなければ、気付かなかった。(ギャップイヤーは)決断力が付き、自己肯定ができる。新しい選択肢として多くの人に知ってほしい」と呼び掛けている。
同協会は19日午後4時半から、ギャップイヤー経験者をゲストに招いた特別イベントをオンラインで開催する。視聴無料。詳しくは同協会noteまで。
■イギリス発祥、日本の大学で取り組み続く
イギリス発祥のギャップイヤー制度は1967年から始まったとされ、90年代初頭には大学入学前の選択肢の一つとして定着、欧米に広がった。
国内では、国際教養大学(秋田県)が2008年、9月入学の前に一定期間ギャップイヤー活動を合格者に義務づける選抜試験を導入。13年には東京大学が制度を取り入れた。文部科学省は15年から5年間にわたり、大学など12の高等教育機関に年間上限2000万円の補助金を出し、22年3月時点でも各大学の取り組みが続いている。
産官学に導入を働き掛けてきた任意団体「ギャップイヤー・ジャパン」の砂田薫代表(67)は「社会体験を通じ自分自身を深く見つめることで、問題設定力や解決力、情報収集力などの向上が期待できる」と、メリットを解説する。
ただ、普及には足踏みが続いている。「人生に空白期間を作ってはならない」という考え方が背景にあるという。
同志社女子大学の秦由美子教授は「高校卒業後は大学に進学するか、就職するかの選択を迫られる。大学卒業後は、大学院にでも行かない限り、新卒採用に不利と考えられている」と指摘する。その上で「政府、企業、大学のバックアップが不可欠。ギャップイヤーをマイナスではなく、プラスに捉えるような社会の度量と許容が必要だ。チャレンジする学生らを温かい目で見守ることが求められている」としている。

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