かつての平清盛邸跡、水族館やフードホールに 閉校の神戸・旧湊山小を活用、卒業生が奮闘中

2022/03/01 14:05

旧湊山小学校跡地にできる複合施設のイメージ図。校庭は芝生広場になる(リバーワークス提供)=神戸市兵庫区雪御所町

 かつて平清盛が邸宅を構えていた地にある神戸市兵庫区の小学校跡地に、一人の卒業生が、新たな複合施設を誕生させようと奮闘している。市が民間事業者に募った跡地利用でスーパーマーケットや介護施設が候補となる中、土地の歴史を思い、「平清盛が住んだ場所やから…」とみかねて手を挙げた。計画するのは、飲食店を集めたフードホールやミニ水族館も併設した施設で「地域のランドマークにしたい」と意気込む。(小谷千穂) 関連ニュース 【写真】フードホールに生まれ変わる前の旧神戸市立湊山小学校の体育館 閉校の校舎にレストランや図書室 「バルニバービ」が淡路に文化拠点整備へ 平清盛が10年暮らした「お気に入りの地」 その理由が一目で分かる高台を訪ねた

 同市兵庫区雪御所町(ゆきのごしょちょう)の旧市立湊山小学校。平清盛が、日宋貿易や福原遷都をしたころに住んだ「雪見御所(ゆきみごしょ)」にあたる地に、1873(明治6)年に創立された。敷地には旧跡を示す石碑が置かれ、歴史愛好家がたびたび訪れていたという。
 140年以上の歴史があったが、児童数の減少により2015年3月に閉校。19年、跡地利用の事業者が公募された。学校跡地を利活用する民設民営施設は、神戸市内で初めて。最長30年の定期借地で建物を売りに出し、事業者からの提案を受けたうえで選定した。
 母校の行く末を、並々ならぬ思いで見守っていたのが、同区で村上工務店を営む村上豪英(たけひで)社長(49)。湊山小の卒業生で、まちづくりプロジェクト「神戸モトマチ大学」や東遊園地での社会実験「アーバンピクニック」に取り組むなど、地元の魅力づくりにも携わってきた。経緯を見かねて自ら新たな施設を提案し、選ばれた。
 周辺の兵庫区北部は、太平洋戦争や阪神・淡路大震災の被害が比較的少なく、昔ながらの街並みが残る。都市部にほど近く、明治期から続く人気の居住エリアだった。ただ傾斜が激しかったり、細い路地が入り組んだりしていて再開発が難しく、空き地が増加。近年は新築が増えつつあり回復傾向もみられるという。
 村上さんは整備する複合施設を、近隣の人にとって「地域の魅力を再認識できる場所」で、遠くの人でも「行きたいと思える場所」を思い描く。耐震基準に満たない一部の校舎を除き、建物を再利用。山や川といった豊かな自然を生かし、“自然を食し、自然を楽しみ、自然に学ぶ”というテーマを掲げ、「ネイチャースタジオ」と名付けた。
 再生される校舎や体育館には、食べられる植物を取り扱う「ハーブショップ」や、約150種類の魚や鳥などの生き物を展示する「みなとやま水族館」、フードホールなどが並ぶ予定。また、学童保育や就労支援、高齢者福祉といった住民に寄り添う機能も持たせる。校庭には芝生が敷かれ、ニジマス釣りができる釣り堀もできるという。
 4月中に一部開業し、水族館とフードホールを含め、7月にグランドオープンする。レストランやクリニックなどが入る新築の西館は2年後に開業する。
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 村上さんは、学校の跡地そのものに地域活性化の力があると確信する。「コミュニティーの中心であり続けた場所だからこそ、地域に受け入れられる」とする。
 文部科学省によると、02~17年度の間、全国で毎年平均約470校の公立学校が廃校になった。兵庫県は合計213校と全国で9番目に多い。
 神戸市中央区の「北野工房のまち」(旧北野小学校)や、姫路市の「香寺ハーブ・ガーデン」(旧山之内小学校)などに生まれ変わった施設もあるが、全体の約4分の1は活用されないままとなっている。
 旧湊山小も、市の土地を借りるため、30年後に更地にして返す必要がある。村上さんは「地域になくてはならない存在となり、跡地再利用のモデルケースになりたい」とも語った。

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