宝塚雪組公演「夢介千両みやげ」「センセーショナル!」開幕

2022/03/19 16:20

お人よしの夢介を演じる彩風咲奈(中央右)と、夢介にほれるお銀を演じる朝月希和(同左)=宝塚大劇場(撮影・吉田敦史)

 宝塚歌劇雪組公演「夢介千両みやげ」が19日、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市栄町1)で開幕した。お節介で心優しい青年、夢介の活躍を描く娯楽時代劇。今作がトップ就任2作目となる彩風咲奈と朝月希和の息もぴったりで、新生雪組の盤石ぶりを見せた。 関連ニュース 【写真】夢介(彩風咲奈)と、お銀(朝月希和)の距離も近づいていく 【写真】ショー「Sensational!」で力強く踊る彩風咲奈ら 【写真】華麗なステップを披露した彩風咲奈

 「桃太郎侍」「遠山の金さん」などの作家、山手樹一郎の同名時代小説が原作。石田昌也の脚本・演出で宝塚が初めて舞台化した。
 小田原の庄屋の息子・夢介(彩風)は父親から「人情の機微が分かる通人になってこい」と千両を持たされ、江戸に向かう。途中、女すり、お銀(朝月)が懐を狙うが、底抜けに優しい夢介にお銀は一目ぼれ。押しかけ女房となり、江戸で一緒に暮らし始める。そこに飛脚問屋の若旦那、総太郎(朝美絢)、お銀の仲間ですりの三太(和希そら)が
からみ…。
 なまり丸出しの田舎者で、ぼくとつだけが取りえに見える夢介だが、周りで起こるさまざまな問題を優しい心と金で解決する。宝塚としては特異なキャラクターを、彩風は誇張することなく演じ、好感が持てる。俳優の鈴木亮平のイメージで、と演出の石田からアドバイスされ、「NHK大河ドラマ『西郷どん』のときの鈴木さんのおおらかさ、温かさを参考にした」と彩風。「こう見せよう」「こう言おう」と意識して演じるのではなく、何気ない言動で優しさを醸し出し、安らぎを与える。「そんな域に到達できれば」と語っていた彩風のもくろみ通り、周りの誰もが愛さずにはいられない、根っからのお人よし夢介が誕生した。
 朝月はきっぷのよさを前面に出して、感情の起伏が激しいお銀になり切り、小気味いい。さらに総太郎(朝美)の明るさ、軽さが物語にリズムとテンポを加える。宙組から組替え、これが雪組デビューとなった三太役の和希もはつらつと演じ、新風を巻き起こす予感がした。
 「和物の雪組」にとっても異色の時代劇であり、キレのある踊り、電飾や映像を多用した舞台演出もユニークだった。
 後半のショー「Sensational(センセーショナル)!」は彩風がその恵まれた身体の美しさを余すことなく披露、随所に斬新な演出が見られ「踊れる雪組」の実力を示した。
 激しいジャズ・ロック調のテーマ曲でにぎやかに幕開け。手足の長い彩風が舞台を自由自在に駆け巡る。今回、宝塚初振付の大野幸人は「キャラバン」をジャズ風にしてビートをきかせる。「トルコ行進曲」のアレンジもあり、なじみのある曲が耳に心地よい。中盤にはアラビアを思わせる衣装で神秘的な雰囲気を演出。フィナーレの「シバの女王」など、多彩な音楽で引き込む。
 男役、娘役が入れ代わり立ち代わり銀橋を渡ったり、終盤、黒燕尾の男役がずらりと銀橋に勢ぞろいしたり。目先を変える演出で楽しませてくれる。
 朝美、和希に加え、若手注目株の縣千が重要なポジションを担う場面も多く、成長著しい雪組。次はどんな舞台を見せてくれるのか、期待が高まる。
 4月18日まで。5月7日~6月12日、東京宝塚劇場で上演。
(片岡達美)

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