堀江謙一さんの初代マーメイド号製造、オクムラボートを訪ねてみた ヨットで太平洋横断、伝統の技で支える

2022/04/02 11:30

東京五輪向けに開発した競技用ヨットの同型艇=姫路市的形町的形

 海洋冒険家、堀江謙一さん(83)が、再びヨットで単独無寄港の太平洋横断に挑んでいる。さかのぼること60年前、堀江さんが世界初横断を成し遂げた際の相棒、初代「マーメイド号」を製造した会社が、兵庫県姫路市的形町にある。播磨灘に臨む作業場を訪ねた。 関連ニュース 「太平洋ひとりぼっち」 堀江謙一さんに聞いた、マーメイド号の進化「60年前は無線も何もなかった」 堀江謙一さん、いまどこ? 太平洋上、位置情報を公開 古野電気「リアルタイムで応援を」 「短パン、Tシャツ姿で帰って来る」 83歳堀江さん、来年3月の太平洋横断向け試験航行

(記事・段 貴則、写真・大山伸一郎)
    ◇
 1918(大正7)年創業で、国内屈指のヨットビルダー「オクムラボート販売」。数多くのヨットが係留された細長い港の両岸に、北欧風の工場や前身の社名を掲げた木造建屋など複数の作業場が並ぶ。
 出迎えてくれた奥村雅晴社長(68)が製造途中の1艇を指さし、悔しがった。「この型のヨットが昨夏の東京五輪で金メダル間違いなしだったんですけどね」。セーリング470級男子で優勝したベルチャー、ライアン組(豪)向けに開発した型だ。コロナ禍の影響で引き渡しができず、同組は他社製で出場し、オクムラ製の金メダル艇は幻に。ただ波の抵抗を極力減らした構造が評判を呼び、大学ヨット部から同型艇の注文が寄せられているという。
 作業場には、スギやヒノキなど木材が積み上げられていた。板を張り合わせて造る和船用で、姫路城内堀の木造遊覧船もオクムラが手掛けた。木材を蒸して船の曲線を生み出すが、設計図通りに曲げるのは簡単ではないという。製造できる会社は少なく、伝統をつなぐ場にもなっている。
 オクムラの技術を見込み、丸木舟や全長15メートルの船だんじりなど、全国各地から依頼が舞い込むようになった。今後、製造を本格化させるといい、奥村社長は「受け継いできた技術に新しい技術も取り入れながら、ヨットや和船造りを続けたい」と前を向く。

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ