球団広報は「鉄腕」と呼ばれた元中継ぎエース オリックス日本一へ ファンへの感謝胸にチーム支える
2022/04/05 11:30
オリックスのエース山本由伸投手(左)に声を掛ける球団広報の佐藤達也さん=大阪市西区、京セラドーム大阪(撮影・鈴木雅之)
昨季、25年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしたプロ野球オリックス・バファローズ。「がんばろうKOBE」を掲げ、阪神・淡路大震災が起きた1995年と96年に2連覇して以来の栄冠に、兵庫のファンも沸いた。いよいよリーグ連覇と日本一を目指すシーズンが始まった。チームの広報を担っているのは、かつて中継ぎエースとして活躍し、「鉄腕」と呼ばれた佐藤達也さん(35)だ。(中島摩子)
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埼玉県の大宮武蔵野高、北海道東海大、ホンダを経てドラフト3位でオリックスに入団した佐藤さん。2年目の2013年に67試合、3年目も67試合を投げて防御率は1・09を記録。2年連続でパ・リーグの最優秀中継ぎ投手に輝いた。
当時の新聞には「143試合すべて投げたい」「僕の体が壊れて優勝できるなら何試合でも投げます」などのコメントが記されている。15年も59試合を投げたが、その後は腰のけがなどもあり、18年のシーズン終了後、32歳で引退した。
プロ生活は7年間。会見で佐藤さんは「正直まだまだできると思っている自分もいるが、線を引かなくちゃいけない。ずっとチームに迷惑をかけていたので、違う形で恩返しできれば」と話し、19年からは球団職員として広報部で働く。
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1軍に帯同し、新聞やテレビ、雑誌の取材の調整などを担当する。試合中、ヒットを打った選手や先発投手に話を聞き、報道機関に伝えるのも仕事の一つだ。
選手に声を掛けるタイミングなど、選手だったからこその気遣いで業務に当たる。そうして迎えた昨季のリーグ優勝は大きな喜びとともに、ある思いを抱いたという。
「選手として優勝を経験できていいなって、ちょっとうらやましい気持ちがありました。0・01パーセントぐらいですけど。自分はクライマックスシリーズで打たれて、すごく悔しかったので」
佐藤さんが連日マウンドに上がっていた14年、あと一歩でリーグ制覇を逃し、クライマックスシリーズでも日本ハムに敗れた。
「鉄腕」とファンに愛された現役時代を、今はどう振り返るのだろう-。
「結局、鉄腕ではなかったな、って。普通の人間が、何とかするために頑張ったぐらいです」
「社会人上がりですでに20代後半だったので、投げさせてもらえることに感謝して、後悔がないよう一日一日全力で、と思っていました。終わってみれば、後悔だらけなんですけど」
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恩返しを掲げ、広報に転身して4年目。見つめるチームには、昨季18勝のエース山本由伸投手、パ・リーグ本塁打王の杉本裕太郎外野手のほか、現役時代にともに戦った平野佳寿投手、T-岡田外野手らがいる。
「ベテランの背中を見て、みんなが競争し合い、新しい選手がのびのびプレーできているのが、今のチームの強み」といい、「日本一に向かうのを、少しでもサポートできれば」。
そして「かつて、スタンドの大声援で全身がしびれる経験をさせてもらった。お客さんの力は本当にすごい。高ぶり、力が湧いてくる」と、ファンへの感謝と期待を口にする佐藤さん。
今季、神戸市須磨区のほっともっとフィールド神戸では、5~8月に毎月2試合ずつ、計8試合が予定されている。