【将棋・女流王位戦 観戦記者エッセー】両者、心身とも充実

2022/04/23 11:00

西山朋佳女流二冠(左)と里見香奈女流王位

 八つある女流タイトルのうち四つを保持する里見香奈女流王位に、西山朋佳女流二冠が挑戦することになった。今期の女流王位戦5番勝負は、頂上決戦と呼ぶのにふさわしい顔合わせである。 関連ニュース 第一人者の貫禄 福間、華麗なさばきでシリーズ3連勝 女流王位戦第3局 女流王位戦で福間が6連覇 通算10期目、女流五冠 加藤女流四段破る 将棋女流王位戦 福岡で第3局始まる 先手福間は中飛車、加藤は攻め駒集中

 西山は昨年、奨励会三段から女流棋士に転向。女流棋士のみに参加資格が与えられている女流王位戦は、今期が初登場だった。強豪ひしめく白組リーグを全勝で制し、挑戦者決定戦では、元女流王位の渡部愛女流三段に快勝して挑戦権を得た。
 同時期に開催されるマイナビ女子オープン5番勝負は、女王・西山に、里見が挑んでいる。タイトルホルダーと挑戦者を入れ替え、あわせて春の10番勝負を戦うことになった。
 両者は、昨年秋にも女流王座戦5番勝負、女流王将戦3番勝負と、連続する2つのタイトル戦でぶつかっている。このときは、いずれも挑戦者だった里見女流王位が奪取に成功している。
 西山は、昨年秋のタイトル戦を「あっさりした将棋が多かった。持ち味だったはずの粘り強さが足りていなかった」と振り返っている。原因のひとつに、西山は体力面をあげている。その反省を生かし、最近は運動する時間をつくり「体調面ではいい状態で挑めそう」と、新たな気持ちで対局に臨む。
 迎え撃つ里見は、今年に入り、女流名人を失ったものの、公式戦では澤田真吾七段、池永天志五段に勝利し、好調といっていい。女流名人戦を戦っている最中は対局数が多かったが、いまは落ち着いており、「長編の詰め将棋を解きリフレッシュした」とも話していた。
 春の10番勝負を両者ともいい状態で迎えているのは間違いないだろう。
 ともに振り飛車党。戦型の本命は相振り飛車だが、西山の振り飛車に対し里見が居飛車に変化する力戦調の将棋になることも考えられる。もちろん両者、さまざまな型を想定しているだろうから、二人の息がぴったり合い濃密な内容の将棋を見ることができそうだ。
 女流二強の戦い。どちらも死角が見当たらない中で、あえてポイントをあげるとすれば、厳しい日程の中で、どれだけ良いパフォーマンスを出せるかだろう。女流王位戦第2局(札幌市)と、マイナビ女子オープン第3局(神奈川県藤沢市)の間は、中2日となっている。ここをどう乗り切るかが、勝負の行方を左右するのではないか。
(新聞三社連合・森本孝高)

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