「今も後悔している」あのプレー 元阪神・赤星さんが著書 古巣低迷、打開のキーマンを指名
2022/04/28 17:15
守備の重要性について真剣な表情で語る赤星憲広さん(撮影・鈴木雅之)
プロ野球・阪神タイガースの元外野手で解説者の赤星憲広さん(46)が、守り重視の野球論を解説する「中堅手(センター)論」を出版した。取材に応じた赤星さんは、開幕から最下位に沈むタイガースについても「守備力」が低迷打開の鍵だと強調。浮上のキーマンに近本、佐藤を挙げた。(津谷治英)
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愛知県出身。大府高校時代は内野手で、春の選抜大会に2回出場した。亜細亜大学で外野手に転向。社会人時代にシドニー五輪に出場し、阪神入りした。プロ選手としては小柄だが、俊足を生かし、デビューから5年連続で盗塁王に。センターの守備力も評価され、ゴールデングラブ賞に6回輝いたことを「誇り」と話し、今回の著書でも、捕球から送球までの動作▽守る位置-の二つのこだわりを紹介している。
古巣タイガースへの愛情もたっぷり。低迷打開の鍵も、やはり「守備力強化」だと話す。
理由は西勇輝、青柳晃洋ら打たせてとる技巧派がタイガースの先発陣に多いことだという。「彼らは三振をとりにいくタイプではないから、野手は当然、打球処理の機会が多くなる。守りのミスが失点につながる」と指摘する。
「どんないい打者でも打率は3割だから、野球で得点できる確率は極めて低い。一方で(エラーしない)チーム守備率は9割を超える。100パーセントに近づけることで失点を防げる。野球は失点しなければ負けない」と持論を展開した。
浮上のキーパーソンに挙げたのが、近本光司と佐藤輝明。特にセンターの後継者でもある近本に対しては「横の打球への動きが俊敏。あとは打球処理を磨いてほしい」と注文する。
「バックホームでランナーを刺すのは外野手の醍醐味。そこで好プレーを連発すると、相手チームには恐怖。二塁走者がシングルヒットでホームに生還する時にちゅうちょするんです。『守りの圧』です」と赤星さんは外野手視点でディフェンスの利を説く。「エラーほど味方投手を落胆させ、流れを悪くするものはない。これを減らすことがタイガース浮上に最も必要な要素」
また佐藤は「打線の軸」として期待する。心配があるとすればセンター近本、ライト佐藤の布陣。「右中間の打球を2人が見合って、衝突しかけた場面を2回ほど見た。甲子園の大観衆の中ではお互いの声が届かず、佐藤はまだ慣れていないのでは」と察する。
「軸となる2人がケガで登録抹消となれば目も当てられない。佐藤選手は送球がいいからサード起用が適切では」と提言していた。
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守りを大事にする野球哲学は、現役時代の苦い思い出の影響もある。
2009年9月12日の横浜ベイスターズ戦。打者は内川聖一だった。右打ちが得意で右方向の打球と読んだ。だが一瞬、センター前へ落としてくるのではとの迷いが脳裏をかすめた。
結果、打球は右中間へ。ためらった分、スタートが遅れた。本能的にダイビングキャッチで飛びついたが、捕球できず、首を負傷。中心性脊髄損傷と診断され、引退の引き金となった。
「ケガは仕方がない。でももう1、2歩右中間に寄っていれば、あの球は捕れた。今でも後悔しています」と振り返る。その経験から、若い選手には「派手なダイビングキャッチがもてはやされがちだが、早く捕球位置に入ればそんなプレーは不要。危険なプレーよりも、まずは準備が大切」と訴える。
ポジショニング(守る位置)重視の視点は、本書の軸として通奏低音に響く。
赤星さんは捕手出身の野村克也監督のそばで配球について教わったが、恩師に一つだけ反発する思いがあった。「外野手出身の監督はだめだ」との意見だ。
「センターからはバッテリーの配球、打者の狙いがよく見える。洞察力が鍛えられる」と強調。ソフトバンクホークスの秋山幸二、広島カープの緒方孝市監督らの例を挙げ、「外野手出身監督の実績を残した」。また派手なパフォーマンスが目立つ日本ハムファイターズの新庄剛志監督も、守備重視のチーム作りを目指していると注目する。
出版にあたり、「外野手を軽視する考えに一石を投じたかった。センターから見た光景を伝えたい」。
「中堅手論」はワニブックスより。968円。