ビル150棟建て替えへ、三宮の大規模再整備 巨額投資7440億円、生まれ変わる街

2022/05/16 17:10

黄色の地域が再整備の対象地域

 神戸が生まれ変わる-。そんな高揚感が街を包む。神戸市の中心部、三宮のあちこちでビル建設の音が響き、一つまた一つと姿を現している。官民で取り組むプロジェクト「都心・三宮再整備」は30年後までに約150棟のビルを建て替え、新たな都市空間を創造する。阪神・淡路大震災から復興した街は今、未来に向けて動き出した。 関連ニュース 【イメージ図】西日本最大級のバスターミナルが入る高層ツインタワー 【イメージ図】高さ約160メートルになる予定のJR三ノ宮新駅ビル 【イラスト】三宮の未来? LRTが走る景観予想図

 震災後、復旧・復興を最優先としてきた神戸は、大阪や京都市などに比べて再開発が遅れた。都市の魅力が薄れ、人口は福岡や川崎市に抜かれて政令市で7位に転落。鉄道6路線が乗り入れ、1日当たり延べ70万人が利用する三宮には、利便性や魅力アップを求める声が相次いでいた。
 神戸市は震災復興で深刻な財政難に見舞われたが、財政の見直しによって投資ができる体力にまで回復。街の魅力向上を公約に掲げ、2013年に就任した久元喜造市長は積極投資にかじを切った。
 三宮が抱える課題は、交通機関の乗り換えにくさや、幹線道路で中心地が分断され、街の一体感のなさにある。市の構想では、車線を減らし、JR三ノ宮駅前に広場や歩行者デッキを設け、回遊性を高める。目指す都市像は「人が主役の居心地の良い街」だ。
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 再整備に費やす投資額は、民間事業も含めて7440億円(市推計)。兵庫県内では類を見ない巨額プロジェクトとなる。
 昨年4月には、その第1弾として神戸三宮阪急ビルがオープン。「でこぼこ広場」などの愛称で親しまれたスペースは、さんきたアモーレ広場として一新され、新たなにぎわいが生まれている。
 JR西日本は昨年10月、高さ約160メートルの三ノ宮新駅ビルを29年度に開業すると発表。市が主導する再開発会社などはその近くに、中・長距離バス約1700便が発着する西日本最大級のバスターミナルが入る高層ツインタワーを建設する。
 再整備の機運に乗り、県内最大規模の商店街「三宮センター街」も、老朽化したビルの建て替えを含めて検討中。地下街「さんちか」では大規模リニューアル工事が始まった。
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 JR三ノ宮駅から南方向へ、ウオーターフロントエリアにかけても新たな街の顔づくりが進む。
 市役所2号館は解体を終え、新ビルにはホテルや商業施設も入る予定となっている。同3号館の跡地に建設中の新中央区役所・中央区文化センターは7月にお目見えする。隣接する東遊園地には、建築家の安藤忠雄さんが手掛けた図書館「こども本の森 神戸」が3月にオープンした。
 神戸港に面した新港突堤西地区では、21年に劇場型アクアリウム・アトアが入る複合施設「神戸ポートミュージアム」が開業した。24年度には1万人収容のアリーナもできる予定で、ホテルや商業施設を建設する案も計画されている。
 25年の大阪・関西万博を見据え、観光スポットとしての定着に加え、雇用の創出や経済活性化も視野に入れる。(三島大一郎、安福直剛)

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