震災で社屋失い、発行危機の本紙 激励した詩は今も編集局に 詠んだ男性「新聞届いた感動、鮮明」
2022/05/18 05:30
阪神・淡路大震災の被災地から新聞が届いた27年前の感動を語る中原道夫さん=神戸新聞社(撮影・大森 武)
阪神・淡路大震災で社屋を失い、新聞発行の危機に直面した神戸新聞社に激励の詩を贈った埼玉県所沢市の詩人中原道夫さん(90)が、本社を訪れた。「この詩を書いたことは人生で最も大きな出来事の一つ」と中原さん。「生きる」ことを問い、今も詩を詠み続ける。
1995年、中原さんは東京都立中央図書館で勤務し、全国の新聞を綴じる作業を担当。しかし、被災地の神戸新聞が届かない。2月初めになってようやく届いた感動を詩に込めた。
おい神戸新聞がきたぞ
だれかが言った
地震のあった次の日からずっと届いていなかった新聞である
(中略)
やったぁ頑張っているじゃねえか
京都新聞との連携だそうだ
新聞を綴じながらぼくは目頭が熱くなった…
中原さんは、高ぶった思いを一気に詩に込めて書き上げたという。詩に共感した神戸市の書家、本多利雄さんが縦70センチ、横2メートルの書にし、96年に神戸新聞社に寄贈。現在は編集局の会議室に飾られている。
中原さんは日本詩人クラブ関西大会に出席のため、夫婦で神戸を訪問。「作品を妻に見せたい」と思い、14日、9年ぶりに来社した。中原さんは「新聞の束が届いた日の感動は今も鮮明。新聞の束に、神戸全体の頑張りを感じた」と話し、額に納まった詩を改めて見つめた。(中部 剛)