違法風俗街の一掃へ「ここでやり切る」稲村・尼崎市長 旧「かんなみ新地」取得方針

2022/05/31 19:40

ひっそりと静まり返ったかんなみ新地=尼崎市神田南通3

 兵庫県尼崎市の違法風俗街「かんなみ新地」(通称)について、市は31日、一帯の土地建物を取得し、更地にした上で売却する方針を明らかにした。稲村和美市長の会見要旨と、幹部を交えた一問一答は以下の通り。 関連ニュース 「飛田」に並ぶ昭和の遊郭一斉閉店 兵庫・尼崎「かんなみ新地」 営業70年で初の警告 尼崎の色街「かんなみ新地」ついに姿消す 戦後から70年、組合解散し風俗店廃業 突然の警告、消えた色街 ママさんは言った「もう、ほんまに終わり」


 【会見要旨】

 昨年11月に全店が一斉閉店して以来、防犯カメラを付け、警察官の巡回も続けてきた。今のところ違法営業はないと認識している。
 ただ、空き店舗は地域の新たな懸念になっている。建物も老朽化しているため、市が土地建物を一時的に取得し、6月から地権者の実態や意向調査を始める。
 現在、飲食店として営業している8店には丁寧な調整をしつつ、年度内の買収完了を目指す。売る側は高く売りたいだろうが、自治体として根拠のある金額であることが重要だ。一括取得すれば、さまざまなまちづくりの公益を確保できる。
 店主や働いていた人らへの相談や支援も進める。小学校の通学路として使える街並みを取り戻すことを当面の目標とし、全庁的にチームをつくって対応する。

 【主な一問一答】

 -市が取得する理由は。
 「市民の不安の声を放置できなかった。まずは子ども。近くに小学校があり、通学路としては最も適切な経路だったが、長年使えていなかった。治安面でも通路が細くて暗く『連れ込まれたら怖い』という懸念が生じていた。一方でこれだけの規模の空き店舗数になると通常の補助事業では解決が難しく、踏み込んだ取り組みが必要と判断し、最大限のチャレンジをした」
 -営業している8店は。
 「本来の飲食店の許可で営業しており、違法性はないとみられる」
 -民間に任せる選択肢はなかったのか。
 「本来は民間の市場性に任せるのが基本だが、過去にも摘発しては復活といういたちごっこが続いていた。買収した人がまた違法風俗店として使う可能性もある。長年にわたって違法営業をしていた負のイメージも強く、売買に乗りにくい状況もあるだろう」
 -更地にして売却するというのは「かんなみ新地を解消する」という意味か。
 「そうです。建物自体も今の建築基準法に適合しておらず、建て替えもできない。違法風俗の撲滅機運はかつてないところまで来ている。ここでやり切る」
 -まちづくりへの影響は。
 「かんなみ新地があることで、駐車場のままになっている土地が少なくない。事態が動けば、周辺の土地の利活用も進む可能性もある。阪神尼崎、出屋敷駅にも近く、駅前のブランド化を強化したい」(聞き手・広畑千春)

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