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1960年代に絵の具を流す手法で描かれた作品群=兵庫県立美術館
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1960年代に絵の具を流す手法で描かれた作品群=兵庫県立美術館
元永さんはニューヨークで滞在中、エアブラシで絵の具を吹き付ける新たな技法に取り組んだ。1967年に描いた初期作「作品 N.Y.No.1」=兵庫県立美術館
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元永さんはニューヨークで滞在中、エアブラシで絵の具を吹き付ける新たな技法に取り組んだ。1967年に描いた初期作「作品 N.Y.No.1」=兵庫県立美術館
1954年に制作された立体作品「ざるから」(左)と「めばえ」の展示風景=兵庫県立美術館
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1954年に制作された立体作品「ざるから」(左)と「めばえ」の展示風景=兵庫県立美術館
神戸新聞NEXT
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 カラフルで生命が宿ったような「かたち」は、活火山のごとく強烈なエネルギーを発する。偶然の産物のようで、実は地道な試行錯誤、緻密な構想が礎になっている。前衛美術集団「具体美術協会」などで活躍した美術家元永定正さん(1922~2011年)は、いかにして唯一無二の抽象表現を生み出したか-。生誕100年となる今年、兵庫県立美術館(神戸市中央区)の展覧会は、その源流に迫る。(小林伸哉)

 「生誕100年元永定正展-伊賀上野から神戸、そしてニューヨークへ-」では、初期から15年間を中心に約50点を飾る。住まいや創作拠点を移すたび、斬新な表現をつかんだ歩みに注目し、3章構成で見せる。

 元永さんは、有機的で多様な「かたち」の面白さを、平面や立体で追求し、鮮やかな色で彩った。水や煙、石までも作品に生かし、詩人谷川俊太郎さんと手がけた「もこ もこもこ」などの絵本も親しまれた。88歳で亡くなるまで、長らく宝塚市で暮らした。

 三重県伊賀市(旧上野町)出身。子どものころ「映画俳優か唄うたいか絵描きになりたいのや」と打ち明けて、母に「堅い仕事をせなあかん」としかられた。

 国鉄職員や郵便局員、材木の運搬、新聞やアイスクリームの営業などを経験しながら、漫画や洋画を描いて夢を追った。神戸新聞「わが心の自叙伝」では「好きな道を続けることは思いがけない自分を見つけることになる」と回想した。

 具体美術協会には1955年に加わった。「人のまねをするな」「誰もやっていないことをやれ」。リーダーの吉原治良が提唱した精神を受け継いだ。

 元永さんの口癖は「『こんなアホな絵を描いたやつの顔を見たい』と言われるような絵を描きたい。それは、なかなか難しいで…」。アホは独自性や直感、前向きさを含んだほめ言葉なのだろう。自らを「アホ派」とも称した。

     ◇

 明るくユーモラスに見える作風は、若き日からの挑戦があってこそ。本展を企画した兵庫県美の主査学芸員、遊免寛子さんは「未知なものを面白がる精神がある」とたたえる。

 元永さんは52年、神戸に移り住み、西宮絵画教室に通う。53年ごろの風景画「神戸・下山手の交差点」について、元永さんの妻で美術家の中辻悦子さん(85)は「ハイカラな街の華やかさが刺激になったみたい。神戸に来てから、色が明るくなる」と指摘する。

 転機は53年の第6回芦屋市展だ。抽象的な出品作を見て衝撃を受けたが、元永さんはどう手をつけていいか分からない。ヒントを求めて海岸を歩き、漂着したざるやコルクを拾い、54年に立体作品「ざるから」「めばえ」を仕上げた。

 最初の抽象画「寶(たから)がある」(54年ごろ)は、摩耶山上で輝くネオンサインから着想した。丸い光のかたちは、後々の「いろだま」を思わせ、中辻さんは「晩年の絵本の表現にまでつながっている」と評する。

 日本画の「たらし込み」の技法から学び、58年からキャンバスを傾けるなどして、絵の具を流した絵画に着手。60年にニューヨークのマーサ・ジャクソン画廊と契約するなど高評価を得た。画材が分厚く盛り上がり、マグマや原始の宇宙を思わせ、子どもにも、魂のようにも、見えてくる。

 自由奔放ではなく、緻密なイメージを抱いて創った。「偶然を生かしながらも、元永さんの意思が入っている」と中辻さんは言う。

 この絵を描くのにどれぐらい時間をかけたのか-。生前、元永さんは問われると、こう答えたという。

 「生まれてから、今までの時間がかかってるんや」

 生誕100年に合わせ、各地で回顧展が開かれる。激動の生涯と比類なき表現を見つめ直したい。

 兵庫県立美術館での展覧会は7月3日まで。月曜休館。一般500円ほか。同館TEL078・262・1011

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