農業スマート化でCO2排出減 ドローン駆使し農薬散布や種まき

2022/06/06 05:30

小麦畑の上を飛ぶ大型ドローン。農作業の効率化と脱炭素に貢献している=加西市玉野町(ドローンで撮影・中西幸大)

 小麦畑の上に大型のドローンが音を立てて飛び上がり、緑が波立つ。霧のように噴射するのは農薬。農事組合法人「あぐりーど玉野」(兵庫県加西市玉野町)での、見慣れた作業風景だ。 関連ニュース Jパワー、石炭火力の高砂発電所を廃止へ 29年3月までに 老朽化進みCO2排出多く 「危険な暑さ」57日増加 今世紀、削減目標達成でも 温室ガス濃度、記録更新 化石燃料や山火事、WMO

 今年は、赤かび病を警戒して散布の回数が例年より多い。それでも理事の高井淳匡(あつまさ)さん(49)は「ドローンならあぜがあっても関係ない。例えば6ヘクタールなら農薬をまくのに半日以上かかっていたが、今は2時間ほどでできてしまう」と笑う。
 麦の農薬散布は3年ほど前から、大型農業機械をドローンに置き換えた。主作物の米も延べ101ヘクタールはドローンを活用。農薬散布だけでなく、田植えに代わる種まきまでやる。トラクターの効率的な運用も併せ、農業機械で使う化石燃料の軽油は激減した。
 トラクターの自動運転や、スマートフォンでできる水管理など効率化を進め、スマート農業としての先進地として全国から視察が相次ぐ。高井さんは「効率化を追求していけば機械に乗らなくなり、『脱炭素』につながる」と語る。
 ドローンには、作物の生育状況を空からカメラで捉え、化学肥料をピンポイントで追加する活用法もある。化学肥料の使用量を抑えることができ、兵庫県立農林水産技術総合センター(加西市)は「生産に化石燃料が使われる化学肥料を減らすのも、脱炭素の一つ」と強調する。
 県によると、経営管理システムなども含むスマート農業が行われている農地は、県内で延べ1328・3ヘクタール(2020年度時点、ハウスは除く)。場所を選ばず、利便性が高いドローンの活用が同730ヘクタールを占めている。
 炭素を土中に貯留する不耕起栽培の研究に取り組む茨城大学農学部付属国際フィールド農学センターの小松崎将一教授(農業環境工学)は「化学肥料や原油価格の高騰もあって、エネルギーの効率化は田んぼや畑でかなり進むだろう」と指摘する。
 農薬、化学肥料を使わない有機農業の推進も、農業の脱炭素の基軸の一つだ。昨年5月、農林水産省は中長期を見据えた「みどりの食料システム戦略」を策定した。2050年までに化学農薬を半減し、化学肥料の使用を30%減らすため、有機農業の面積を農地の0・5%(18年度)から25%まで引き上げるという目標を掲げる。
 その手段の一つが、市町村が主体となる「オーガニックビレッジ」の創出だ。農業者以外の事業者や住民も巻き込み、生産から消費まで有機農業の態勢づくりを進める市町村の取り組みを、国が交付金を使って支援する。
 兵庫県でも、有機農業に力を入れる丹波市などが手を挙げている。同市の担当者は「将来の子どもたちのために環境を守らなければ、という声を農家からも聞く。農家と一緒に消費者への普及活動などに取り組みたい」と話す。
(森 信弘)

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ