若者狙ったSNSでの社会運動や政治発信 大学生は意外と冷静「思考偏りそう」
2022/07/09 06:00
スマートフォンで交流サイト(SNS)を眺める若者=神戸市内
政治参加の手法は投票だけではない。近年、交流サイト(SNS)上でのハッシュタグ(検索用の目印)を使った運動や、ブログから発信された声が時に無視できない「世論」となり、社会や政治を動かすことがある。選挙でも、若年層の票掘り起こしを狙ってSNSが積極的に活用されるようになった。しかし大学生に聞いてみると、その反応は意外と冷静だった。
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「#MeToo」「保育園落ちた日本死ね!!!」「#生理の貧困」…。いずれもSNS上で拡散したキーワード。今では誰もが手軽に思いを発信し、賛同もできる。実際、拡散後は待機児童に関するニュースが増えたり、全国の自治体で生理用品配布の動きが進んだりと現状に一石を投じる手段となっている。
特にツイッターでは、多くの人が同じ話題についてつぶやくとトレンド欄に表示され、より多くの人の目に触れる。ただし、学生の距離感はまちまちだ。
甲南大2年の男子学生(19)は「(トレンドに上がっていると)逆に見るのを避けたくなる」。SNSで発信される政治への意見は、見る人の気を引くためなのか、極端なものが多い気がするという。「思考が偏りそうで、自然とシャットアウトしてしまっているかも」
神戸大2年の女子学生(19)も「海外のアーティストが大統領選など自国の政治について発信しているのは見るけど、日本ではなぜかなじめない。政治の話は個人的な意見が強くて信用しにくい」と漏らす。SNSは写真共有アプリ「インスタグラム」で友人の投稿を楽しむ程度だ。
一方、「アイドルやモデルなどの有名人が『投票に行ってきました、みんなも行きましょう』と投稿しているのは好印象」と語るのは別の女子学生(19)。「発信力のある人が呼びかけるべき」と思う。
神戸大2年の男子学生(21)は「自分の興味のある話題なら見る」。最近だと、ツイッターで見つけた「高校生は三角関数より金融経済を学ぶべき」というワード。気になってすぐ調べたら、今年5月、衆院議員が国会で発言し、賛否がわき起こったことを知った。「自分が理系なので気になったし、友達とも『あれどうなん』と話題になった」と話す。
動画投稿サイト「ユーチューブ」を情報源として活用する若者も。「政治や法律の解説動画をよく見る」とは関西学院大2年の男子学生(20)。「動画を選ぶ基準は面白くて分かりやすいこと。ニュースなどでは流されない裏話などは知りたくなる」。テレビの報道記者が政治の内幕を語ったり、解説したりする動画もお気に入りの一つ。1分以内で再生できるものもつい見てしまうという。(綱嶋葉名)
■「直接民主主義的」な使い方が特徴
【武庫川女子大生活環境学部情報メディア学科の藤本憲一教授(メディア論)の話】SNSで若者に受けているのは、コンビニの新商品について投稿したら入荷につながったり、“推し”の有名人などの活躍に貢献できたり、といった直接民主主義的な使い方だ。
政治は間接民主主義。投票してもあとは政治家次第というところが、若者にはまどろっこしい。今の若者は「好きなこと」「嫌いなこと」には目を向けがちだが、どちらでもないものには関心を示さない。SNSで政治の話題を敬遠するのもそれゆえかもしれない。政治家も実は、そのままでいいと思っているのでは。文化政策など若者の興味がありそうな分野でもっと発信していかないと、政治は遠いままだ。
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