拉致被害者家族の有本さん 安倍氏訃報に深い喪失感「身内を亡くしたような気分」

2022/07/09 10:30

安倍晋三元首相との思い出を語る有本明弘さん=8日午後、神戸市長田区

 安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件を受け、拉致被害者で神戸市出身の有本恵子さん=失踪当時(23)=の父、明弘さん(94)は8日午後、「身内を亡くしたような気分」と深い喪失感を語った。 関連ニュース 安倍元首相死去 神戸製鋼所時代の同僚「やり残したことあっただろうに」 安倍元首相銃撃 斎藤知事「蛮行繰り返されないこと願う」久元市長「神戸発展への支援に感謝」 兵庫県内、憤りの声「言論には言論で応えないと」「これで問題が解決できたのか」

 1997年に結成された「北朝鮮による拉致被害者家族会」の活動が大きな実を結んだ2002年。被害者5人の帰国が実現した日朝首脳会談で、官房副長官として当時の小泉純一郎首相に同行したのが安倍氏だった。安倍氏は、その後も拉致問題に取り組み、第2次安倍内閣の発足以降、全面解決を政権の最重要課題の一つに掲げた。
 8日昼ごろ、有本さんはテレビで事件を知り、後に訃報に接して衝撃を受けた。「東京に行ったら、必ず安倍さんの事務所を訪ねた」。妻の嘉代子さん=当時(94)=を2年前に亡くした。安倍氏は家族会の結成後、関係を温めてきた「身内」のような間柄だった。
 拉致問題に一生懸命取り組む姿が印象に残っており、米国を介して何とか問題を動かそうとしてくれていたという。有本さんが、国際社会での日本のあるべき姿を訴えると、安倍氏は黙って耳を傾けてくれたという。「いろんな国会議員がいるが、一番話しやすい政治家だった」。有本さんは、安倍氏と記念撮影をした写真を胸に抱えて振り返った。(霍見真一郎)

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