宍粟への移住促進、移住者の手で 先輩8人がグループ結成 体験者の目線で魅力発信

2022/07/14 10:55

宍粟の桜をアピールするしそくらメンバーたち=宍粟市波賀町(しそくら提供)

 「移住の候補地に兵庫県宍粟市も!」。市内在住の男女8人が今年4月、宍粟への移住・定住を促進する住民グループ「宍粟くらし移住支援舎-しそくら」を設立した。メンバーは全員、市地域おこし協力隊員として移り住んだ若者たち。「移住者として体験したことを次の移住者に生かしたい」。そんな思いを胸に、情報発信やコミュニティーの場づくりに向けて力を注いでいる。(村上晃宏) 関連ニュース 【写真】豊かな自然の中で森林浴を楽しむメンバーたち 近畿「住みたい田舎ランキング」3年連続トップ3独占 兵庫の但馬地域 土地代込み5万円の破格物件、まさかの展開


 しそくら代表は養蜂家田中啓介さん(37)=同市。同市千種町鷹巣の宿泊施設「たかのす東小学校」の運営に関わる林拓真さん(35)=同市=が副代表を務める。他のメンバーも観光や農業など多彩な分野に携わっている。
 設立のきっかけは、林さんが岡山県真庭市で移住・定住の窓口を担う住民グループ「COCO真庭」を知ったこと。地域おこし協力隊員として真庭に移住してきた住民が、積極的に地元の魅力を発信する活動に興味を持った。林さんは「宍粟は行政しか窓口がない。移住者目線で何かできないか」と考えた。
 一方、田中さんの胸の中にも、ある思いがあった。宍粟での暮らしは気に入っているが、他の協力隊員ら移住者と会う機会が少ない。「移住者同士がつながりを持てる場所があれば」。そんな考えを持っていた。
 他のメンバーも、人口減少に伴う空き家や耕作放棄地の増加など、宍粟の課題を感じていた。そこで「行政とは違う視点で移住・定住を促進できる団体をつくろう」との声が上がり、設立に至った。
 初年度の活動として「空き家対策」▽「コミュニティー活動」▽「情報発信」-の三つを柱に掲げた。
 宍粟市には空き家バンク制度があるが、同バンクに登録していない空き家もある。そこで、空き家の数や状態を把握・管理し、移住希望者につなげる活動を目標にする。7月上旬には市の担当者を招いた勉強会を開き、空き家の現状について学んだ。今後、本格的な空き家調査に乗り出す。
 コミュニティー活動では将来的に移住促進イベントや体験会を開き、都市部との交流を進めていく。「まずは地元住民に活動内容を理解してもらうことが大切」と考え、8月下旬、活動内容を紹介する展示会を市役所で企画している。
 また宍粟の自然や伝統、人々の暮らしといった魅力を集めた季刊誌の発行を準備している。現在は自分たちも知らない魅力を発掘するため各地を巡っており、ホームページを開設して交流サイト(SNS)でも発信していく。
 しそくらは、移住者同士がつながる「居場所」として発展させる構想を持つ。田中さんは「宍粟で新しいことを始めたいと考える移住者を支援できる場所にしたい。宍粟が移住先の選択肢の一つになるよう情報発信や魅力づくりに励む」と意気込む。
 活動に参加する会員らを募集中。運営資金の寄付も呼びかけている。問い合わせはメール(info@honey888.jp)

■宍粟市への移住者数 住宅取得制度で20~30代世帯増
 宍粟市では支援制度を活用した移住者が増加傾向にある。年齢別では制度が始まった当初、世帯主が40代以上の移住者のみだったが、近年は20~30代の若い世代の移住も増えている。
 市の主な制度として、空き家バンクと住宅取得時の補助がある。空き家バンクの登録数は2022年7月上旬時点で55軒あり、市ホームページを通じて築年月や間取りを紹介。住宅取得補助では一戸建てやマンションを購入する際に最大50万円、空き家の改修に最大50万円などの支給がある。
 市住宅土地政策課によると、21年度に制度を活用した移住者は35世帯82人。移住前の居住地で最も多いのは播磨地域が19世帯で、次いで県外12世帯、播磨以外の県内4世帯だった。世帯主が20~30代の移住者も16世帯に上った。
 空き家バンクが始まった翌11年度は移住者が7世帯で、15年度までは年10世帯未満だった。だが、住宅取得制度ができた17年度以降、20~30代の世帯主の移住が大幅に増え、18年度以降は30世帯前後の70~100人ほどで推移している。同課担当者は「移住・定住を希望する人をしっかりと応援していきたい」と話す。

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