大切な一票、緊迫の一日 参院選投開票日、猪名川町選管に密着
2022/07/14 11:10
投票所からの速報値をスマホで受ける職員ら=10日午前10時半、猪名川町役場
10日に投開票された参院選。有権者が投じた大切な一票を管理したり数えたりするのが、都道府県や市区町村に設置される選挙管理委員会だ。期間中、事務局で働く自治体職員は多忙を極める。その締めくくりと言える投開票日、兵庫県猪名川町選管に密着した。(斎藤雅志)
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▶速報作業は細やかに
午前6時、町役場副町長室。町内14カ所にある投票所の担当職員代表が集まり、今中一郎事務局長(56)が投票用紙や選挙人名簿を手渡して言った。「よろしくお願いします」
午前7時、投票が始まった。役場内の選管事務局では、5人の職員が投票者数の速報値をまとめていく。
「第14投票所ですね。男性31人、女性24人、計55人…」。職員はスマートフォンを耳に当て、復唱しながらボールペンを走らせた。
速報は投票終了まで計8回。情報を集め、ファクスで県選管に知らせる。
初回の締め切りは午前9時だ。今中事務局長は「細かく状況把握することがミスを防ぐ」と力を込めた。
▶不在者投票を投票箱へ
午後、投票所の一つ、伏見台集会所に選管委員4人が着いた。手にした紙袋に入っているのは不在者投票の用紙。
不在者投票は、選挙期間中に仕事や学業で町内にいなかったり、病気などで投票所に行けなかったりする有権者が利用できる。その投票用紙は選管事務局で厳重に保管され、当日にそれぞれの投票所の職員が投じる。
町の有権者は2万5068人で、不在者投票した人は128人。
投票所では立会人監視の下、職員が住所や名前が書かれた封筒を開ける。中から投票用紙が入った封筒が出てきた。色は選挙区がオレンジ、比例代表はグレー。
その封筒を段ボールに入れてシャッフル。かき混ぜる理由は、誰が、どの候補に投票したかを分からなくするための大切な工程だという。それから一票ずつ取り出し投票箱に入れていった。
「一人一人の思いがこもった票。入れ忘れがないように何回も数えます」
職員の月岡暉史(あきふみ)さん(27)の目は真剣そのものだ。
▶緊迫の開票作業
午後9時、開票所の社会福祉会館。職員が開披台に集まって投票箱をひっくり返し、職員総出で集計が始まった。
その直後、いきなりトラブルが発生した。選挙区の票を候補者別に振り分ける分類機が設定通りに動かない。数人が集まる。表情は皆、険しい。ほかの職員は休むことなく手作業で票を数え続ける。幸いにも30分後、トラブルは解決した。
一方、比例代表は分類が多く、ほとんどが手作業でするしかない。途中で数え間違いが発覚した。集計をやり直す。日付が変わってもなお、作業は続いた。
壇上では立会人12人が目を光らせ、票の束を次々とチェックする。
「目が疲れる。でも一票で結果が変わるかもしれないので気を抜けない」。初めて立会人を務めた大学1年の井戸和希さん(18)は緊張した面持ちで語った。
▶集計後の票は…
11日午前2時37分、ようやく全ての票の集計が終わった。職員たちは票を段ボール箱に詰め、さらにそれを誰かが勝手に開けないよう四方を白い紙で巻き、立会人にはんこを押してもらう。保管場所はもちろん秘密にしている。
投票率は選挙区、比例代表ともに58・52%だった。がらんとした開票所から、職員が箱を運び出した。
「次の選挙ではもっと重くなりますように」。ずっしりと重みを感じつつ、そう願いながら。